収容者に迫る危険に「証拠を残しておくべき」と考えた
――“牛久”に収容されていたみなさんを取材することになったきっかけは?
トーマス・アッシュ監督(以下「トーマス」) 一番初めは、教会のボランティアとして、彼らに面会しました。私は、社会から排除されている人たちのサポートをしたかったんです。ホームレスの方に食べ物を配給したこともありますし、マイノリティの人のためにできることをやりたいと思っています。
――日本にいらして何年になりますか。
トーマス 2000年から日本に住んでいるので、およそ22年です。文部省(当時)などがやっていた「JETプログラム(語学指導等を行う外国青年招致事業)」がきっかけで、英語を教えるために来日しました。
――アメリカを離れて日本にいらしたんですね。“牛久”収容者との共通点を感じますか?
トーマス 彼らは戦地や危険から逃れるために、日本に来るしかなかったんです。私は選択したうえで日本に来ました。それに仕事も、ビザも、健康保険もありますから、全く違います。
――危険を顧みず本作を制作したのはなぜでしょうか?
トーマス 目の前で苦しむ人の存在を知ってしまったら、何もしないわけにはいきませんでした。自分が行動しなければと使命感を覚えたんです。
面会をして一番最初に、彼らが病気になっていたり、連続してハンストをやって体を壊していたりして「死んでしまうんじゃないか」と心配になった。ボランティアはみんな心配しています。そして何かが起こったときに、なかったことにされないために、証拠を残すべきだと思いました。
例えば誰かが亡くなったり、何か起こって裁判になった場合、証拠が必要になったら使うことができる。それに入管側が撮ったビデオなどの独立した資料だけでは、中でどんな酷いことが起こっていたか背景がわからない。でもその前後のインタビューがあれば、状況がよくわかります。
やがて、この映像を公開すれば、問題提起になるんじゃないか、ということに気がついて、映画にするというアイディアに結びついていきました。