「土偶は縄文人が食べていた植物や貝をかたどったフィギュアである」という仮説を立て、土偶の正体を明らかにした話題の本『土偶を読む』(晶文社)。昨年末に第24回みうらじゅん賞を受賞した著者の竹倉史人氏と、賞を贈ったみうらじゅん氏による初対談を月刊『文藝春秋』2022年3月号より、一部転載します。
「土偶の謎を解いた」
みうら 昨年の4月に『土偶を読む』が出てすぐに、友人のいとうせいこうさんからお勧めされたんです。買って読んでみたらメチャクチャ面白くて、その時点でみうらじゅん賞の授賞はほぼ決定していたんですが、うちの発表の前にサントリー学芸賞を授賞されちゃいました(笑)。
竹倉 「土偶の謎を解いた」と言い切るスタンスで本を書いて、考古学の権威に挑んだわけですが、逆にアカデミックな世界で権威のあるサントリー学芸賞をいただくというパラドックスが生まれてしまって。
みうら みうらじゅん賞で権威もだいぶ薄まったと思いますが(笑)。
竹倉 ただ、みうらじゅん賞すらも権威になりかけているという新たな問題が発生しているんです(笑)。
みうら 常々「ケンイ・コスギ(権威濃すぎ)」には気をつけているんですが(笑)。『土偶を読む』は「この土偶のモチーフはこれだ」と明確に書いてあるところも面白いんだけど、助手の人と実際に現地に行って藪の中を探索したり、助手に変な貝を毒味させたりするじゃないですか。あの道中記にワクワクしました。
竹倉 助手の彼は素直で、何でもちゃんと食べてくれるんですよ。
みうら その「ホームズとワトソン」的な関係性も魅力的でした。やっぱりデータだけじゃつまらないから。最初の「遮光器土偶のレプリカを買って、ベッドで一緒に寝た」というところから可笑しかったし。
竹倉 土偶のレプリカは本当に赤ちゃんみたいな感じなんですよ。「遮光器土偶は里芋をかたどったフィギュアに違いない」と思って、自分で里芋を栽培して収穫してみたんですが、半年かけて大きくなった里芋を地中から掘り出すとき、産婆さんみたいな気持ちにもなったんです。
みうら 遮光器土偶が里芋に似ていると、気づいたきっかけは?