こうした経緯を経て2020年7月には、山健組と池田組が神戸山口組を離脱するという事態となった。警察庁は当初、暴力団対策法上の規制を維持するため離脱を認めなかったが、次第に両組織の独立を認めざるを得なくなる。岡山県公安委員会は2021年11月、池田組を独立組織として指定暴力団とした。
「形勢は完全に6代目優勢へと導いた」
山健組については、独立以上にさらに輪をかけて驚愕のニュースが伝わった。同年9月、6代目山口組に復帰したのだ。
前出の警察当局の幹部が解説する。
「6代目側は資金力が豊富な池田組をまず狙ったはず。実際に組織の要の若頭が撃たれ、動揺は大きかった。続いて中核組織の山健組の若頭が刺された。さらに池田組の若頭が2代続けて撃たれた。それでも神戸側からは音なしの状態だった。このあたりで、山健組と池田組は気持ちが離れたのではないか」
若頭襲撃だけではなく、2019年秋には山健組系組員2人が同時に射殺されたほか、神戸山口組幹部が自動小銃で射殺されるといった残忍な事件も起きた。
そしてこの警察幹部はこれらの事件を引き合いに、「すべて高山だ」と強調する。
「池田組、山健組への事件の戦略を考えたのは高山だろう。追い打ちをかけ、各個撃破で内部の分断、離反を引き起こす。戦わずして勝つということではないが、形勢は完全に6代目優勢へと傾いた」
キーマン・6代目山口組若頭の高山の次の一手は?
さらに幹部はそもそも「山口組の分裂も高山の不在のためだったとも言える」ともいう。
「恐喝事件で高山が服役していて社会不在だった際に山健組などは決起した。分裂したのも高山が理由。その後、刑務所出所後に神戸側に攻勢をかけたのも高山。結局すべてが高山を中心に動いている」
対立抗争のこれまでの経緯を振り返って、別の警察当局幹部は2021年末に出回った「組長引退」「高山7代目」の怪情報に、個人的な見解としての解説を付け加える。
「司は今年で80歳となった。いずれは引退することになるだろう。ただ、引退するのは分裂の騒動に決着を付けた後になるはずだ。引退するにあたっては、神戸山口組組長の井上(邦雄)の引退、そして神戸側の解散が必要。その花道を、カシラの高山らが司に用意するはずだ。高山はきっとそこまで考えている」
6代目山口組若頭の高山の存在。彼はすべてにおいてキーマンと言える。警察のマークの対象となり続けるのは間違いないが、次はどんな一手を打ってくるのだろうか。(文中敬称略)