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――それほどの努力をテレビでは「アーノルド・シュワルツェネガー」という一つのギャグだけに落とし込むというのが、やはり芸人さんですね……。 

きんに君 それは自分の立ち位置もあるというか。番組に名だたる芸人さんが出演してる中で、僕にふられるのは5秒とか、それぐらいだと思うんですよ。その中でできるだけ爪痕残さないとダメで。「いや実は大学卒業しまして」ではオチない。オチは常にこっちじゃないと、僕の場合、成立しないんですよ。 

――テレビでは「負け」の姿を見せる。 

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きんに君 いやあ、なんというかね。でも、最近YouTubeのコメントで「今まで芸人としてはなんとも思わなかったんですけど、筋トレ始めてからスゴさがわかりました」みたいなのはきます(笑)。 

YouTubeチャンネルの登録者数150万人でも「ギリギリ」

――失礼な(笑)。今、多くの芸人さんがYouTubeをやられていますが、なかやまさんはかなり早い時期から始めていました。登録者数も約150万人、この成功をご自身はどう分析されますか。 

きんに君 分析ですか……100%はわからないし、本当はもっといい方法があったかもしれないですけど、とにかくよりわかりやすく、丁寧に作ろうとは思っていました。

 やっぱりサムネイルで釣ったりすることも、やろうと思えばできるし、やってる人もいるんですよ。「これだけでめちゃくちゃ痩せる」とか書いてあれば、みんな見ますから。でも本気で筋トレをやってきた分、そういうのはできるだけやめようと。

 あとは、自分の面白さって自分が一番わかってると思うんです、どの芸人の方も。それをテレビに合わせたり、舞台に合わせたりしているだけで。だから、自分の中にある「こうしたらもっと自分は面白くなる」を実現するために、自分で編集しようと思いました。 

 いや、でも「YouTubeが人気らしいですね」って言ってもらうたびに、僕の中でほんとそういう感覚なくて。常にギリギリでやってるような感じですね。 

 

――そうなんですか? 

きんに君 吉本退所の時にも「もうYouTubeでいけるしね」って言われましたけど、その感覚、全然ないです。今の状態に安住して、ただ同じように発信していても誰も見てくれないじゃないですか。次はどういうことをしたらいいのかって、常に考えないといけないですし。企画的にもいつもギリギリなんですよ。 

――固定ファンがついてるから、あとはうまいこと回していく……みたいな感じではないんですね。 

きんに君 ないですよ。だから常に新しいことを見つけるために、取材に行かないといけないし、アメリカでの活動も見据えないといけないんです。今の筋肉系YouTubeは「今日はこんな筋トレしました」「他の筋肉系YouTuberとコラボしました」っていうのが主流だと思うんですけど、それだけだと突き抜けられない。

 普通に日本にいてトレーニングするのが筋肉的にも一番生活しやすいわけですけど、なかやまきんに君というタレントを成長させるためには、海外に行って最新の情報を取材したりしたいし、大会にももっと出たいです。ほんと今のままで安心してはダメなんです。 

「筋肉芸」は先人がいなかった

――新しいことに挑戦するにあたり、恐怖心はないですか? 

きんに君 そうですね。僕は筋肉キャラでやってきましたが、そのキャラで目標になる人はいなかったんですよ。僕が最初なので。

 それはどういうことかと言えば、とりあえずスベらないといけないとこから始まるんですよ。データがまったくないので。いきなり筋肉の人が出てきて、「ワーッ」って言って、それがお笑いになるかどうかの実例がないんです。

 もう全部手探りでした。とりあえずスベるしかなかった。