「ものすごく不器用なんです、俺」ボクシング当初は縄跳びもできなかった
──ボクシングでも反復は生きた?
片岡 ええ。最初はね、ひどいものでした。32歳でジムに入ったんですが、なにしろ体重65kgでしょう? どんくさくて、縄跳びもできない。ジムの人たちはがっかりしたと思いますよ。
──プロになる宣言をして始めたのに、スタートからつまづいた。
片岡 縄跳びができなくて、トレーナーに「どうやって跳ぶんですか?」と聞いたら、「鶴さん、コツはないです。うまい選手を見て、そのイメージを描きながらひたすら飛ぶしかない」と。だから、毎日縄跳びに引っかかり続けましたよ。無様な姿で。
でも不思議なもので、1週間、2週間、そして3週間やると、少しずつ引っかからなくなる。さらに1か月、2か月経つと、少しだけ、ボクサーのような跳び方に近づいた自分がいるんですよ。
──完璧に跳べるようになったのはいつ頃?
片岡 続けるうちに何となく、ですね。足の運びも、続けていると0.00001mmずつくらい、ごく微々たる気付きがあって、その度に修正する。自分の体で感じながら反復するしかないです。
──どんなジャンルであれ、反復こそが結果に出ますか?
片岡 出ますね。
──確信したんですね。できない自分に失望している暇はない?
片岡 ないですね。もちろん「自分は下手だ、うまくいかないな」とは思うけど、最初からうまい人はいないんですよ。
ものすごく不器用なんです、俺。まず、センスがない。運動神経もない。ボクシングも絵もヨガも、自分はダメだとわかってて、最底辺から始めてるんですよ。他の人が1、2回でできることも、5倍、10倍もやらないとできない。
「いつまでにできるように」と期限を決めない
──自分では不器用だと?
片岡 世間の方は「鶴太郎は器用にいろいろやっている」と思うかもですが、とんでもない。ひたすら反復。あとは、期限を決めないことです。