こども家庭庁、こども基本法、教育データ利活用など、大変に揉めておりますね。

 個人情報保護法など情報法制を専門のひとつにしております私としても、教育だけでなく医療やフェイクニュース(ディスインフォメーション)のような、国家や大手プラットフォーム事業者が扱う個人(日本に住む人)に関する情報の問題は、もはや避けては通れないレベルで国民的議論になるのではないかと思っております。

「教育データ利活用ロードマップ」出来は悪くない

 先日も、教育データの利活用の是非を巡る議論を整理した「プライバシーフリーク・カフェ」のイベントをやったのですが、600名を超える同時視聴者にお越しいただき大盛況でした。それだけ教育とデータ利用の関係は関心が深いのだと思います。

ADVERTISEMENT

プライバシーフリーク・カフェ「教育ログを考える」
https://jilis.org/events/2022/2022-01-20.html

©️iSotck

 というのも、それに先立つ1月7日、私たちの公教育で子どもから取る教育データの利活用について、デジタル庁がこういう方針でやろうかと思っているというガイダンス的な「教育データ利活用ロードマップ」を発表しました。

 結果的に、世間が教育データとは何かを整理しないうちから内容が踏み込みすぎだったために大炎上して、有識者会議でまた揉み直したりしていましたが、正直申し上げてこのロードマップ自体の出来は凄く良いんですよ。誰しもが教育という普遍的な事柄に関しては一言ありますし、雑多な意見から専門家の議論まで全部にらんでひとつの紙にまとめるというのは相当な難作業だったと思います。よく頑張った。

子どものデータを、学校でいままでどう管理してきたのか

 他方、この内容で揉めるということは、結局のところみんな学校とは何ぞやという問題から、学校で子どものデータをいままでどう管理してきたのかというところまで、意外と知らないまま議論しておったのではないかと思います。専門家会議の内容を見ていても、公教育、とりわけ義務教育(小学校から中学校まで)を前提に教育データを扱う場合、いままで学校の中で閉じていた各種子どもに関する情報もまた、データにして利活用しようという話になればパンドラの箱が開くわけです。

 最たるものは、大阪府箕面市の「子ども成長見守りシステム」がある程度うまくいったので、新設する(かもしれない)こども家庭庁で省庁横断的に学校のデータを使っていこうという話が出てきます。

 もちろん、子どもに対する家庭での虐待や、シングルマザーなどひとり親家庭の貧困対策を子ども救済の観点から進めるにあたり、子どもが通うセカンドプレイスである学校での様子からつかみ取れる内容をデータ化して、教育委員会を抱き込んだ市区町村など自治体(地方公共団体)が先回りして児童福祉の観点から介入できる根拠にしようという話にもなります。必要なことだからやろうね、というのはその通り。進められるものは、ぜひ進めていただきたいと願います。