「特に人文系の博士は低所得」な日本社会についての報道がありました。

 元ネタは、文部科学省傘下の科学技術・学術政策研究所が出したこのレポートなんですが、2018年度に博士課程を修了した男女3,800名あまりにヒヤリングした結果、人文系博士は社会に出てもツブシが効かず、はした金で雇われている実情が露わになっています。

「『博士人材追跡調査』第4次報告書」の公表について(科学技術・学術政策研究所)
https://www.nistep.go.jp/archives/50303

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いくつになっても学ぶことは大事

 他方、先日のTwitterでは「大学院に通う主婦」に対して「亭主が稼いだ金で妻が育児を放り投げて大学院に通うのはカルチャーセンター状態だ」的な反応が出て、そこにさらに「学びたい人は誰でも大学院へ」と教育関係者が広く学問を呼びかけるツイートに反響が集まるなど、学ぶことと学ぶ人のあり方について興味深い議論があったわけなんですよ。

 かくいう私も、2014年から東京大学政策ビジョン研究センター(現・未来ビジョン研究センター)で社会保障論の客員研究員をやり、また2019年からは46歳にして新潟大学大学院博士前期課程に進学して個人情報保護法や、FATF勧告などを扱う犯罪収益移転防止法について研究しています。いくつになっても学ぶというのは大事なことだし、学んで研究したことを論文にしたり問題点を政府に指摘して嫌がられたりするのは「社会や人生をより良くするために学ぶ」という大事な所作だと思うんですよ。

©️iStock.com

ベルトコンベアー式進学を経て就職する「消極的選択世代」

 また、幼稚園保育園入園から高校・大学卒業、就職ぐらいまでは、ベルトコンベアーに乗っかっているというか、自分の意志というより「みんなが進学するから」「大学に行こうとすると、多くの人が受験をするので、自分の偏差値を見ながら入れそうなところを受験する」という、受け身の選択をするケースが多いと思うのです。

 果ては、みんなが就職活動を開始したので自分も良いところに入社できるよう頑張るという雰囲気になり、別段生きてきて入りたい会社とも思っていなかったところの入社志望動機を考えて捻り出す作業までやるわけです。20代ぐらいまでは、社会の中でできているレールの上を、悩みながらも消極的な選択肢を選び続けることで、なんとかなっていく人生だろうと思います。