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 それは生徒たちがプライベートのコミュニケーションでつかうスマートフォンでも同じだった。生徒たちはLINEやインスタグラムでも、当たり前のように互いに汚い言葉を投げ掛け合っていた。

日常でつかう言葉を歪め、別の形での蔑みや差別

 また、生徒同士の関係性で、特に女子のLINEグループの間には、「ランダムに1人を選んで仲間外れにする」ということがあった。

 別の同級生は次のように語る。

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「みんなごく普通に人を傷つけるような言葉をつかってました。いじめみたいに特定の人を狙って叩くのはダメだけど、軽い言葉でからかったり、バカにしたりするのはオーケーみたいな空気があった。でも、やられる方からすればものすごくつらいですよね。私もそれがすごくつらくて、いつ自分に向くのか怖かったです」

 今は、学校側が早い段階からいじめの防止教育を行っているので、生徒たちは教師が示す「いじめ」にあからさまに該当する行為をすることは少ない。その代わり、日常でつかう言葉を歪め、別の形で人を蔑んだり、差別したりする。

 たとえば、ネットで広まった言葉に「ガイジ(害児)」がある。もともとは障害児に由来するらしいが、今は「嫌な奴」「むかつく奴」という意味合いでつかわれる。

 信頼関係のある生徒同士の間でつかわれていれば「バカじゃん」くらいの軽い意味でしかないし、大人もほとんど意味を知らないので、聞いても深刻ないじめとは見なされない。だが、信頼関係のない生徒の間でつかわれれば、「この害虫野郎め」のような言葉になり、相手を深く傷つけることになる。

 同様のことは、学生たちにとって口癖のようになっている「うざい」「死ね」についても同じことが言える。今の学生の会話では当たり前のように出てくる言葉だが、受け取る相手や関係性によっては、これ以上ない罵倒となる。

深草知華さん

SNS上で仲間外れのターゲットに

「ガイジ」のような無数の言葉が日常的に飛び交う教室、SNS環境が、知華のいたクラスの日常だったのだろう。こうした言葉が当たり前のようにつかわれ、誰かが無差別に攻撃を受けるのは、ネット社会のあり方にも通じるものがある。同高校で一学年に3クラスしかないのに、10人以上が中退している事実は、そうしたことと無縁ではないだろう。

 知華がSNS上で仲間外れのターゲットになったのは1年の3学期のことだった。この時、彼女が別の友達にLINEで「怖すぎて死にたいわ」と漏らしていることから、それがどれほど心の折れる出来事だったか想像できる。

 高校2年に進級する際、知華は進学コースの3組から就職コースの2組に移り、A子とクラスが別れた。1年のクラスでは、クラスメイトの金が立て続けに盗まれるといった事件も起きて警察が調べに来たほどだったから、知華はそうした環境にも嫌気が差し、クラスを変更することにしたのだ。