令和2年、若年層10代の自殺者数は777人と過去最多を記録した。その自殺の原因のトップは「学校問題」――いったい子どもたちを取り巻く環境に何が起こっているのだろうか? インスタグラムをきっかけとした「熊本・高3女子インスタいじめ自殺事件」から現代のいじめの本質に迫る。(全2回の2回目。前編を読む)
※本記事では深草知華(ともか)さんのご両親の許可を得た上で、知華さんの実名と写真を掲載しています。「同じ悲しみで苦しむ子供たちを救えるような環境に変わってほしい。一人でも多くの方々にこの問題に関心を寄せてもらいたい」というご両親の強い思いを受け、編集部も、知華さんが受けたいじめの実態を可能な限りリアルに伝えるべきだと考え、実名と写真の掲載を決断しました。
◆ ◆ ◆
まるで小学校低学年の学級崩壊
高校3年になって、知華の身にもっとも恐れていたことが起きた。進学コースの3組にいたA子が、突然仲間とともに知華のいる就職コースの2組に移ってきたのである。
2組は、A子たちが来たことによって殺伐とした空気になった。A子はすぐに女子のリーダー的な存在になり、男子のトラブルメーカーだったK也と親しくなった。
ただ、このK也も、いわゆる旧来型の不良タイプではない。遅刻をくり返し、授業中は小学生のように騒ぎ立てる、現代の典型的な幼稚な生徒だったことが、知華の親友の証言から浮き上がってくる。
「3年のクラスは授業になりませんでした。先生が授業をしている最中、K也は突然大きな声で奇声を上げたり、パンをすごい勢いで食べだしたり、机や壁を叩いたりする。周りの生徒たちもだんだんと同じようなことをするようになっていきました。授業妨害っていうか、みんなが衝動的にバラバラにやってる感じ。先生はほとんど注意せず、無視して授業をしてました」
まるで小学校低学年の学級崩壊のようだが、不良のいない現代の学校における荒れ方とはこのようなものなのだ。
SNSのフォロワーが多いことによる妬み
一方で、教室に飛び交う罵詈雑言も2年の時の比ではなくなっていた。相手の人格を否定する暴言が飛び交い、それによって傷つく者がいたとしても、教員はそこに踏み込もうとしない。先の親友はつづける。
「私や知華みたいなおとなしい生徒は、みんなの言葉を聞いているのが本当に嫌でした。ずっと耳を塞いでいるというか、とにかく聞かないでおこうとするのに必死でした。あまりに多すぎて一つひとつちゃんと聞いていたら、こっちがおかしくなってしまいそうだったんです」
知華はこうしたクラスの空気を嫌悪して距離を置こうとしていたが、それがかなわなかった。A子は知華のSNSのフォロワーが多いことを妬んでちょっかいをかけてきていたし、何より2年の冬頃からクラス一のトラブルメーカーだったK也が一方的に知華に恋心を募らせて、猛烈なアプローチをかけていたのである。 熊本県いじめ防止対策審議会の報告書には、知華とK也は恋人として交際していたと記してある。だが、親や友人の話、それに二人のLINEの記録を検討すると、必ずしもそうではなかった可能性がある。