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「言葉がいかに凶器となるのか世に訴えたい」娘の命を“悪態”で奪われた遺族の無念

熊本高3女子インスタいじめ自殺事件#2

2022/08/20

source : ライフスタイル出版

genre : ニュース, 社会

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断ることにより、悪口を周りに言われることを恐れていた

 まず、母親は知華からK也に告白されたことを教えられた際、「××(知華の親友)をいじめる人で、授業中もめっちゃうるさくて何もないのに突然叫んだりして怖いし、好きじゃない」と聞かされている。それで母親は知華に、「断りきらんならお母さんのせいにして断るたい(断ったらいいよ)」と答えたそうだ。

 スマートフォンに残された記録からも2人の関係が深くなかったことがうかがえる。スマートフォンには2人で写っている写真が1枚も残されておらず、K也は家の場所さえ教えられていなかったようだ。さらにLINEの記録には、知華の方からK也に対して積極的に愛情を示す言葉は残されていない。友人の見解では、知華は引っ込み思案な性格から、K也の自分勝手なアプローチを上手にかわすことができなかったのではないかということだ。たしかにLINEの記録を見れば、K也から何度も電話がかかってきて知華が折れたように応じたり、好きだと言われて自分の感情は示さないものの「ありがとう」と答えたりしている。こうした態度が、K也を勘違いさせてしまったのだろうか。

 知華の親友は言う。

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「知華が好きだったのは(2年生の)B男君だったから、K也とは付き合っていなかったと思います。むしろ断れなかったんじゃないかな。K也は断られたら、周りの人間に知華の悪口を言い回るようなタイプです。知華はそれをわかっていたから、嫌だと言えなかった。それで付き合ったことにされたか、一部の人には付き合っていると言わざるをえなくなったんだと思います」

深草知華さん

「別れたい」と悩みを友人らに打ち明けていた

 教室で普段から乱暴な言葉が飛び交うのを聞いていれば、K也からのアプローチを断れば何が起こるかわかる。そうした背景もあり、知華は自分の意志を口にすることができなくなっていった。

 事実、知華はK也に近しい人には交際を認める一方、自分が仲のいい友人にはK也から送られてくるLINEのメッセージを見せて「助けて」と言っていた。「気持ち悪い人がいる。彼氏でもないのに彼女と言いふらしたり、Twitterに書き込んだりしている」と語ったこともあった。心を寄せる相手がいながら、つきまとうK也との関係を切れずにいたのは、思春期の女の子にとって相当苦しかったはずだ。

 事件のきっかけとなる出来事は、新学期から1カ月半が経った5月16日に起こる。

 この頃、知華はK也に付きまとわれることにかなり気が滅入っていたようだ。前日に、彼女は友人らにK也と別れたいという悩みを打ち明けている。

 16日の授業が終わった後、知華は19時頃に学校の近くにあるコンビニで母親と待ち合わせをしていた。店の前には、心を寄せているB男が友達3名と一緒に動画を撮って遊んでいた。