1ページ目から読む
4/4ページ目

LINEのグループから外すように仕向けられ…

 2年になってから彼女は心機一転しようと、1年時に入部したまま行っていなかった茶道部を辞め、仲のいい友人と書道部に入り直した。小学5年から書道教室に通っていたこともあり、作品が新聞社や大学が開くコンテストで入賞することもあった。

 また、別の仲のいい友達3人とLINEで「バカ丸出し組」というグループをつくって深夜まで何時間もやりとりしたり、休みの日に一緒に遊びに行ったりした。人間関係を刷新したかったのだ。

 だが、普通科が二クラスしかない狭い学校では、クラスを変えるだけでは生活環境が劇的に変わることはない。同グループのメンバーが知華をLINEのグループから外すように仕向けたのである。3人のうち2人はA子と親しく、残りの1人はどっちつかずみたいな立場だったが、知華だけがグループからはじき出されたのだ。

ADVERTISEMENT

 年配の人間からすれば、LINEのグループから外されただけでと思うかもしれない。 だが、10代の子たちにとってLINEのグループは可視化できる「友情の証」であり、そこから外されるというのは、目に見える形で絶縁を宣言されるのと同じことなのだ。その屈辱と落胆はあまりに大きい。

深草知華さん

教員の生活指導との間の大きな隔たり

 また、自分だけ除いたLINEグループが存続していれば、その密室で自分に対する陰口が書き連ねられているのではないかと想像しなければならない。学校でのいじめは下校すれば逃れられるが、SNSは家に帰った後も24時間、気になり続ける。あるいは傷つく書き込みが残っていれば、それはボディブローのように心を蝕む……。やる方は無自覚だが、やられる方には、終わりのない半永久的ないじめなのである。

 では、なぜこうしたことを教員たちは野放しにしていたのか。教員の方が旧来型の指導にしばられていることも大きいだろう。

 教員にしてみれば、A子ら生徒が発する言葉は乱暴だが、「ガイジ」のようにスラング的なつかわれかたをしていれば、一時代前のような明らかないじめとは断言できない。また、クラスで「うざい」「キモイ」「死んでほしい」といった言葉が常用されていれば、それが日常会話になってしまっているので本格的な指導の対象となりにくい。

 また、スマートフォンは学校内での使用は表向き禁止となっているものの、プライベートにまでは介入することができない。つまり、現代の生徒たちの行っていることと、教員の生活指導の基準の間に大きな隔たりがあるのだ。

 そんな学校生活の中で、知華の心の支えの一つがB男の存在だった。知華は1学年下の彼にひそかに恋心を寄せていた。そんな彼とたまたまインスタグラムで知り合い、LINEでやり取りするような仲になっていたのである。

 だが、どこにでもある17歳の淡い恋心が、事件を引き起こすことになる――。

◆◆◆

【厚生労働省のサイトで紹介している主な悩み相談窓口】
▼いのちの電話 0570-783-556(午前10時~午後10時)、0120-783-556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前9時)
▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)
▼よりそいホットライン 0120-279-338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは0120-279-226(24時間対応)