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戦力外になった選手たちの引退試合にはしたくない…「WorldTryout」は何を目指しているのか

文春野球コラム ウィンターリーグ2022

2022/02/25

「WorldTryout」をご存じでしょうか?

 毎年秋に行われるNPB主催の12球団合同トライアウトとは別の、元プロ野球選手、社会人・大学・高校生、独立リーガー、MLBマイナーリーガーなど、「何度でも這い上がろうとする」すべてのプロ野球選手に対し、世界を相手に応援する舞台。それがWorldTryoutです。

WorldTryout2019は神宮球場にて開催された。「何度でも挑戦する」のシンボルである清原和博さんが監督を務めた。

なぜ「WorldTryout」を立ち上げたのか

 私は、株式会社WorldTryoutの代表取締役CEOをしております加治佐 平と申します。一介の研究者である私が2019年にWorldTryoutを立ち上げた背景には、私自身の野球と研究の経験が大きく関わっています。

 私は、軟式野球部しかなかった鹿児島ラ・サール高校時代「野球をするなら甲子園を目指したい」という気持ちから、学校に働きかけ、3年かけて硬式野球部を創設しました。そして、初出場となった甲子園夏の予選で、ベスト16まで勝ち上がり、前年度甲子園出場メンバーが残るチームと対戦し、惜敗しました。その後、東京大学野球部に投手として入り、六大学野球で神宮のマウンドを経験しました。

 甲子園球児やプロ注目選手などトップレベルの選手たちと戦うことができ、その高いレベルを体感し、間近で観たことは、財産になっています。そして、今でも“身体能力お化け”であるトップアスリートを観るとワクワクしますし、私の活動のモチベーションとなっている根幹です。

 その後、私は大学院から企業、大学と、今までずっとバイオエンジニアリングという、生物と工学の研究を続けてきました。そして近年は、生活習慣病や精神疾患の予防医療に向けたセンサに関する研究をしながら、「怪我をしなければどれだけのアスリートが頂点を極められることだろうか」という想いをもちつつ、「いずれはアスリートへ研究で貢献できるといいな」とおぼろげに考えていました。

 そこにはかつて神宮で対戦した選手たちが、プロや社会人の舞台で活躍する姿に影響を与えられています。彼らの中には怪我により、2〜3年で引退を余儀なくされる厳しい選手もいて、「怪我さえしなければ絶対プロに行ったのに」という想いを、実際に自分の研究の応用で役立てることができないかと考えていました。

 そういう野球と研究への想いから、挫折した選手への「何度でも立ち上がって挑戦し続けて欲しい」という願いと「怪我さえなければ挫折せずまっすぐステージを駆け上がっていけるはず」という想いから株式会社WorldTryoutを立ち上げました。

MLB5球団のスカウトを始め、世界各国のスカウトが熱視線

 2019年11月30日。神宮球場において第一回の「WorldTryout2019」を開催しました。元日本プロ野球(NPB)選手、独立リーグ、社会人選手、そして外国人選手と、日本のプロ野球や、海外のプロリーグを目指して再起をかける選手たちを、海外のスカウトに観てもらうという、はじめてのショーケースの試行です。

 復活を期す象徴として、清原和博さんが監督を務め、元プロ野球選手4名を含む総勢25名が真剣勝負を繰り広げました。

元プロ野球選手4名、マイナーリーガー4名を含む25名が真剣勝負し、片岡篤史さん、入来祐作さんが駆付けた。

 彼らのプレーには、MLB5球団のスカウトを始め、世界各国のプロ野球のスカウトが視線を送り、出場した元巨人・西武の高木勇人投手は、メキシコのプロ野球へ。MLBマイナーリーガーであったテルビン・ナッシュ選手は、日本の独立リーグに入団し、活躍しました。

 私としても、「3000人程度の観客動員」、「選手の国内外への移籍の実現」、「海外10球団以上のスカウトの視察」、「試合中のパフォーマンスデータの取得」とさまざまな試みを行うことができ、0から1を創り出すイベントとしては、成功を収めたと思っております。

 なにより「本当にこの選手を応援したい」と、自然と人が集まることこそがこのイベントの本質であると実感しました。その最たる例が、清原和博さんを応援したいと、片岡篤史さん、入来祐作さんが自ら参加を希望してきたこと、また、当日直接球場に内田順三さんが訪れたこと。このシーンを目の当たりにし、また、本人たちからの感謝の言葉を頂いたことは、イベント主催者として感動しました。