「俺が一手に引き受けます!」
まず、瓶に入ったコーラ(当時はペプシコーラ)が観客の人数分用意されるのだが、それぞれに観客の番号が書かれている。その中には、当たりのカードと退場のカードが入っていて、コーラを飲み切ると、それが分かるようになっている。
そして、出演陣がコーラを選んで飲み、前者が出ると、その番号の観客は、出演者の記念品がもらえる。
それに対して、後者が出たら、すぐに退場を命じられ、『いいとも!』の続きも、その後の『いただきます』も観ることができなくなる。
その瞬間、観覧席から飛び交う「キャーッ!」の悲鳴! まさに「13日の月曜日」だ!
ところが、タモリさんは「俺、炭酸はそんなに飲めないよ」と言い、他の出演陣(たしか、せんだみつおさんもいた)の反応も「いやー、何本も無理だなー」というものだった。
しかし、コーラを数多く飲んで、当たりか退場のカードを出していかないと、コーナー企画として盛り上がらない。
そこで、俺が「分かりました。俺が一手に引き受けます!」と宣言し、一人でコーラを飲むようになったのである。
とにかくガンガン飲み続けた。毎回、4、5本は当たり前だった。
その飲みっぷりのよさがまた、観覧席から、歓声や驚喜の声を生み出すことにもつながった。
そんなある日、横澤さんからこう言われたのである。
「ナベちゃん、もう当たりとか退場じゃなくて、早飲み対決のコーナーにしちゃおう」
まさに、渡辺正行の運命を大きく変えた言葉だった。
俺にとって、コーラの早飲みは、いわば“出世作”であり、いまだにメディアに呼ばれると、リクエストされることが多い(正直、スピードはかなり落ちたし、しんどい!)。
飲む直前には必ず、コーラの瓶を持った右腕を右斜め下に伸ばすとともに、左腕は左斜め上に挙げる。そんな定番のポーズを取った瞬間、「おお、懐かしい!」 などと喜ばれると、俺もまた、昔を思い出し、快感に浸ったりしている。
『いいとも!』で毎週早飲み対決をしていたとき、その相手はさまざまだった。観覧席から希望者を募ったこともあるし、何かの告知でやってきた著名人も多かった。
そんな挑戦者が現れるたびに、俺が迎え撃った。そして、横澤さんに買われた飲みっぷりのよさを発揮し、次々と倒していった。
まあ、毎回、4本くらい早飲みをするため、苦しさのあまり、トイレに駆け込んで吐くことも多々あったのだが……。いやあ、体を張って仕事してたなー。
ところが、連戦連勝が一度だけ途切れたことがあった。
「ああ、連勝ストップかあ……。まあ、しょうがないな」
というぐらいに思って楽屋にいると、ドアがコンコンとノックされた。開けてみると、そこに立っていたのは横澤さんだった。
普段、俺の楽屋に来ることなどなかったので驚いていると、「ナベちゃん、負けちゃったね……」という言葉を残して、すぐに帰っていった。