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苦しさのあまり、トイレに駆け込んで吐くことも…「笑っていいとも!」から始まった渡辺正行の“コーラ早飲みバブル”の時代

『関東芸人のリーダー お笑いスター131人を見てきた男』より #1

2022/03/13
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もっと無理をすること。無理と我慢

 横澤さんは、いつも笑顔を絶やさず、穏やかな方だった。

 だからこそ、その一言が胸に突き刺さった。

「そ、そうか……。負けちゃいけないのか……」

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 この日を境に、コーラの早飲み対決で俺は絶対に負けなくなった。勝利するための二つのコツを編み出したからだ。

 では、それは何か? まず第一に、「もっと無理をすること。もっと無理と我慢」である。

 いやあ、このフレーズ、営業(いわゆるイベント)の仕事でよく使ったなー。口にする度に、ドッカーンとウケたテッパンのネタ!

 それはさておき、一つ目のコツは、できるだけ顔を上に向けて、コーラの瓶を立てたら、ゴクゴク飲まずに、そのまま一気に口から胃まで流し込む。

 ゲップは飲み干した後に取っておけばいい。それがまたお決まりとなって、ウケるのである。

 こうして、俺の早飲みのスピードは確実に伸びていった。なにしろ、全盛期は余裕で3秒を切っていたほどだ。

 しかし、無敵を誇るためには、「早く流し込む」だけでは足りなかった。

 なぜなら、ガタイの大きい挑戦者は、基本的に、飲むスピードが速いからだ。

 その対策として、俺が掴んだ二つ目のコツ、それはコーラの温度の使い分けだった。

 実は、コーラは冷えている方が、炭酸が喉に刺激を与え、一気に飲むことが難しい。

 そのことに気づいてから、俺は毎回、キンキンに冷えたコーラの瓶を2、3本くらい用意していた。

 対決の場に、大きくて手強そうな挑戦者がやってきたときに、キンキンに冷やしたコーラをさりげなく手渡し、俺は俺で、すました顔をして、常温のコーラを飲んでいた。