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「メッタ刺しにされた被害者の血の海が…」重要参考人だった“密入国者”の捜査が難航した理由とは

東久留米市ラーメン店殺人事件 #1

2022/03/07

genre : ニュース, 社会

「あれは蒸し暑い日で、現場に到着した時から血の臭いが漂ってきた。実に残忍な殺人事件だった。あの現場は思い出したくない」

 捜査を担当した組対2課の元刑事Aは、事件についてそう語った。被害者は全身30カ所以上を鋭利な刃物で刺されていたのだ。

外国人の凶悪犯罪の減少による、捜査1課・2課の統合

 警視庁・組織犯罪対策部、通称「組対」が2022年4月1日付けで再編されることになった。増加し凶暴化しつつある外国人の犯罪、手口が巧妙でわかりにくくなりつつある暴力団の犯罪の捜査、摘発を目的として、組対が設置されたのは2004年4月のこと。

©iStock.com

 改編に伴い、入管法違反の不法残留や密入国などの捜査、地下銀行などの犯罪の捜査を行う1課と、外国人犯罪の中でも凶悪事件や殺人事件などを扱う2課が統合され「国際犯罪対策課」となる。コロナ禍で来日外国人が減少し犯罪も減ったのかと想像するが、外国人による凶悪犯罪も激減し、取締りの対象がなくなってきたことも統合理由の一つであると聞く。

 過去には多くの事件を捜査してきた刑事たちだが、なかには思い出したくない凶悪事件もあったという。

メッタ刺しにされたラーメン店の店長

 2008年6月28日、事件が起きたのは東京都東久留米市のラーメン店だ。深夜まで店で仕事をしていた店長が惨殺された。店長は、事件の数年前に日本国籍を取得し帰化していた40代の中国人男性。真面目な働きぶりで店を任されていた。

「殺害現場は凄惨の一言につきた。裏口から入ると、メッタ刺しにされた被害者の血があちこちに飛び散っていて、そこはもう血の海。長年刑事をやっていても、あれだけの量はそう見るもんじゃない。店の壁はあちこちに飛んだ血で、まるで真っ赤な絵を描いたようになっていた」

2008年6月28日、殺人事件があった東久留米市のラーメン店を調べる捜査員 ©共同通信社

 元刑事Aがそう言うと、元刑事Bも「生臭い血の臭いが、いつまでも鼻について取れなかった。あの臭いは何年たっても慣れるものじゃない」と鼻先をこすった。

 発見者は住み込みで働いていた中国人従業員。深夜12時過ぎに店を閉め、同僚の中国人従業員とともに寮のある2階へ上がる。店長はその時、売上伝票の整理をしていたという。真夜中、階下から響き続ける大きな音で目が覚めた従業員は、不審に思って階段を下り、店を覗いた。寝ぼけ眼の彼の目に飛び込んできたのは、裏口近くの床に血まみれで倒れていた店長の姿だ。隣の弁当店にすぐさま助けを求めに走ったが、呂律が回らないほど動転していた。警察に通報したのは弁当店の店主だ。