『解きたくなる数学』(佐藤雅彦、大島 遼、廣瀬隼也 著)岩波書店

「ピタゴラスイッチ」の生みの親・佐藤雅彦氏が、教え子たちと長年開催してきた数学研究会。そこから生まれたユニークな数学問題集がスマッシュヒット中だ。

「数学的な表現を日常にありそうな具体的な風景に置き換えることで、問題に入り込みやすくなるんです。たとえば、通常の数学書であれば『格子点』と書くものを、歩行者が写り込んだ歩道の舗装タイルの写真を見せて『タイルの隅』と表現するとか。私の今回の仕事は、著者たちが問題を表現するために最適なものを探す過程を、研究会の一員としてただ見守るだけに近かったです。細部まで伝わりやすいように工夫された画像・文章表現を、ギリギリまで粘って選び抜く。その研ぎ澄まされた感覚に、佐藤さんの表現者としての凄みを感じました」(担当編集者の濱門麻美子さん)

 刊行直後から、数学書としては異例の動きを見せた。読者は小学生から高齢者まで幅広く、最年長は80代。子供や孫と読む人もいれば、自分のために買った読者もいるそうだ。

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「大人の読者からは、『数学は苦手だけどこの本は楽しかった』という声がよく届きます。ひとつずつ論理を積み重ねた結果、パッと視界が開けて解ける。ピタゴラ装置にも似た数学の楽しさを、数学が得意な人はもちろん、苦手な人も味わえる本になった手応えを感じています」(濱門さん)

2021年9月発売。初版2万部。現在7刷12万部

解きたくなる数学

佐藤 雅彦 ,大島 遼 ,廣瀬 隼也

岩波書店

2021年9月29日 発売