「事務所の社長さんから『今日からアリスよ』って言われたんです」と、バラエティ番組で広瀬アリスが自分の芸名について語ったことがある。所属事務所フォスター・プラスは、設立当初から所属する瀬戸朝香から近年の鈴鹿央士に至るまで、所属タレントの多くに本名ではなく芸名をつけてデビューさせている。

ミス・セブンティーンに選ばれ、人気モデルから女優へ

 アリス、という名前に事務所がこめた期待、打ち出したいイメージは伝わる。誰もが知るルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』以降、アリスは単なる固有名詞を越えて、少女性を象徴する特別な意味を帯びた名前になっている。「美少女」のイメージで大衆に認知されることは、芸能界ブレイクへの定番コースのひとつであり、それは事務所の「親心」でもあったのだろう。実際に彼女はこの『広瀬アリス』名義でミス・セブンティーンに選ばれ、人気モデルから女優へと順調に活動を広げていく。

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 だがこのアリスという名前が象徴する少女性、透き通るような美少女という求められるイメージは、10代のころの広瀬アリスにとって重荷であり、負担だったのではないか。近年の彼女が自分の過去を「反抗期だった」と振り返るインタビューを読むと、そう感じることがある。自信が持てず、仕事に前向きになれなかったが、朝の連続テレビ小説『わろてんか』をきっかけに自分の仕事に向き合えるようになった。多くのインタビューで彼女はそう語る。

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 10代のころ広瀬アリスは、事務所の求める食事制限にしばしば反発したという。バスケットボールチームに所属するスポーツ少女から芸能界に転じた彼女の当時の体型は、今見ても健康的な標準体型の域を特に出てはいない。だが彼女がいたのは芸能界であり、折れるほど細い美少女たちがあふれる中で事務所は彼女に「アリス」の名を冠していた。求められるイメージと、自然な自分とのギャップに彼女は苦しんでいたのかもしれない。