「食事をつくってほしい」と正式なオファーが
その日も、地元素材をふんだんに取り入れ、丁寧につくった料理「野菜たっぷりのサラダ風ちらし寿司」を用意した武重さん。後日、藤澤選手から「稚内での大会時に、食事をつくってほしい」と正式なオファーが届く。以降、北京オリンピックまでに行われた3回の稚内での滞在期間中、合計31日間、ロコ・ソラーレの選手は全員、武重さんのつくる食事を食べて、長い戦いを乗り切った。
ロコ・ソラーレからの武重さんに対する要望は以下のとおりだ。
・食べることが仕事の一部なので楽しく食事したい
・油ものは控えたい
・野菜たっぷりメニュー
・試合の3時間前に摂りたい
朝食は宿のホテルですませ、昼と夜はモシリパのダイニングに食事をしにやってきた。各選手が自分の体調に合わせて食べられるよう、自分で大皿から好きな分量を取り分けるスタイルで、和気あいあいとした雰囲気だったという。また、食事の時間帯にこだわるロコ・ソラーレのために会場で食べられるようケータリングも用意した。
「彩りよくおいしそうでワクワクするようなごはん」「美亜さんがつくるごはんだったら何でも良い」という選手たちの言葉も料理のヒントになったという。栄養バランスは重要だが、それ以前に「自然と箸が進む、おうちで食べるようなホッとするごはん」を意識した。
そしてまたロコ・ソラーレが見せる、試合中と変わらぬ相手への気遣いや前向きな態度に、武重さんも大きな力をもらったと振り返る。「緊張を強いられる日々も、自分のつくった料理を『おいしい!』と積極的にリアクションし、よく食べてくれたことは、料理人として何より嬉しかった」と武重さん。常に感謝の気持ちを表す姿勢が、力を伸ばし続けている彼女たちの持ち味と感じたそうだ。
とりわけ、昨年9月の北京オリンピック世界最終予選日本代表決定戦は、2連敗からの激闘を3連勝で飾り優勝。五輪への道が開けた特別な大会となった。18日間に及ぶ長期滞在中も、武重さんは料理を昼・夜と提供し続け、ロコ・ソラーレに勝利をもたらすパワーを与えた。