ロシアからのフェイクニュースがないかチェックしている
――日本に来てからはどんなお仕事をしていますか?
「色んな会社で働きました。最初は英会話教師、その後は旅行関係、スポーツメディア向けの宿泊手配や日本カルチャーを伝える外国人向けの観光ガイドもしました。
コロナ禍になった昨年ぐらいからは京都のホテルで働いています。留学エージェントとしても登録していて、日本に来たいという希望を持っているウクライナ人やロシア人を日本の学校に紹介したり、日本の銀行口座の作り方や、携帯電話の契約などのサポートもしていました。
ただ、今回こんな事がおきてしまって『私もウクライナのために何かしないと』と思い、今はテレビ局のニュース番組で、ウクライナ語を日本語に翻訳する仕事を手伝っています。ウクライナ政府の公式ニュースを翻訳したり、ロシアからのフェイクニュースがないかチェックしたりが主な仕事ですね。正しい情報を伝えることはとても大事ですから」
――セーニャさんが考える日本の魅力とは何でしょうか?
「一番は人の優しさです。まだ日本に来たばかりで日本語がよく分からなかった頃、最寄り駅の南砂町駅から下宿先への帰り方が分からなくなったことがあったんです。それで困って交番に行きました。警察官に住所を見せると、行き方を説明してくれたのですが、日本語が全然分からなかったので理解できない。見かねた警察官が、自分のお金でタクシーに乗せてくれたんです。本当にありがたかったですね。
日本は落とし物をしても誰かが届けてくれますし、道が分からなければ誰かが案内してくれる。そんな優しさに驚き、泣くほど感動しました」
シェルターに避難していた母が写真を見て涙を流した
――日本でも、ロシアの軍事侵攻に反対するデモが起こっています。
「テレビの翻訳の仕事があったので、デモには少しだけ参加しました。実はデモの前日、渋谷でウクライナのために募金活動をされている若者を見かけてとても感動したんです。『ウクライナの支援のためにお願いします』って道行く人に声をかけてくれていて。その方と少しお話をしたんですが『僕らがやれることはこういうことしかない』『よかったら一緒にやりませんか?』っていってくれて、私も彼らと一緒にボードを持って、募金を呼び掛けていました。
募金してくれた人は皆さんとても温かい人ばかりで。5千円をいれてくれた人や、小銭を最後のコインまで全部いれてくださる方もいました。彼らはそのまま集まったお金を大使館まで持っていくそうで、別れ際、私に手作りのウクライナの国旗の旗をくれました。
彼らはその日の翌日も翌々日も募金活動を続けてくれたようです。そんな彼らと一緒に撮った写真をキエフの地下のシェルターに避難していた母に送りました。母や一緒に避難していた人たち20人ぐらいがみんな涙を流したそうです『応援してくれてありがとう』『その気持ちだけで、生き残るんだというモチベーションが高くなります』って」