いよいよ4月8日の最終回まで残り1カ月を切ったNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(総合、月~土曜午前8時ほか)。るい(深津絵里)やひなた(川栄李奈)の今後、安子(上白石萌音)の再登場などに注目が集まるなか、ひなたが勤務する条映撮影所の映画監督・轟強を演じる土平ドンペイ(55)が「週刊文春」の取材に応じ、“大部屋俳優”時代の苦労や共演者との交流など2時間にわたって撮影秘話を明かした。(全2回の1回目。後編を読む)
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『俳優募集』のチラシが突き刺さった
土平は1966年7月10日生まれ、大阪府大阪市出身。大部屋俳優を経て上京後、映画やドラマに多数出演。主な出演作は、映画「探偵はBARにいる」「GANTZ」など。朝ドラは「カムカム」を含め、「べっぴんさん」「花子とアン」など7作品、大河ドラマも「功名が辻」「軍師官兵衛」などに6作品に出演してきた。
――俳優を志したきっかけを教えて下さい。
「大阪のど真ん中の生まれで、野球推薦で滋賀の比叡山高校というところに行ったんです。ただ、怪我が原因で甲子園を断念して、高校の寮から出て家から通うことになった。大阪から滋賀への通学で京都駅を通るのですが、夢破れてぶらぶらしていた時に、東映京都撮影所の『俳優募集』というチラシを見つけました。
それまで俳優になりたいという気は全然なかったんですが、それがすごく突き刺さって、突然『これだ!』と。電話してみたら、2年間養成所に入るオーディションみたいなものがあると言われ、何も分からず受けに行ったら、『非常に個性がある』と言われ、入れてもらえました。ただ、2年で卒業して、そこからすぐに俳優になれるわけではありません」
――といいますと?
「まずは、東映の大部屋俳優に所属する形になるんです。京都での大部屋俳優はほぼ『仕出し』と言われるエキストラの仕事が中心です。しかし、仕出しは着物も鬘も自分でできなければ現場に出られない。通行人が1人欲しいという時に、あそこ歩いてとか言われる。行商人や駕籠舁(かごかき)などをよくやりました。当時の日給は6500円。ただ、東映には先輩が大勢いて、仕出しすらも中々巡ってこなかった。そもそも斬られ役は、仕出しでも『先生』と呼ばれるほどのベテランでないとできない。松重豊さん演じる伴虚無蔵はまさに『先生』ですね」