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「悲鳴と怒号と嗚咽が絶えない…」祖国ウクライナから脱出する難民と最前線に戻って戦う若者が交錯する街に、それでもあった“束の間の静寂”

「悲鳴と怒号と嗚咽が絶えない…」祖国ウクライナから脱出する難民と最前線に戻って戦う若者が交錯する街に、それでもあった“束の間の静寂”

#2

2022/03/10

genre : ニュース, 国際

 不肖・宮嶋、最後の戦場取材へ――。

 数々のスクープ写真で知られる報道カメラマンの宮嶋茂樹さん(60)。これまでにイラク、北朝鮮、アフガニスタン、コソボなど海外取材を数多く経験し、あまたのスクープ写真を世に問うてきた。そんな不肖・宮嶋がロシアの軍事侵攻に揺れるウクライナへ。混乱する現地で見えてきた「戦争の真実」とは?

(シリーズ2回目/最初から読む

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 予約をとっていたスイスホテルからウクライナ西部の都市リビウにあるバスターミナルに、向かいの車が差し向けられたのは1時間後であった。運転手は英語を話した。なんや車が走ってるやんけ。しかも夜間外出禁止令にも関わらず。

 しかし、よくよく運転手の話を聞くと、運転手は平時はスイスホテルのマーケティングを担当しており、いまは夜間外出の特別許可を得て迎えにきたとのこと。

リビウの深夜のバス停 撮影・宮嶋茂樹

「来週からロシア人を殺す訓練を受けに行くから」

 しかし、朝4時の外出禁止令下ということもあるが、誰も歩いていない。車も通わない。これが戦時下なのである。なのにインターネットは機能しており、車内ではついさっき飛び込んできたウクライナ南東部にあるヨーロッパ最大のザポーリージャ原発がロシア軍により攻撃されたことによるゼレンスキー大統領の雄姿とその声明が運転手のスマホから流れていた。

リビウ中央駅で 撮影・宮嶋茂樹

 夜間外出許可を得た運転手ということで、ダメもとで聞いてみた。「キーウ(キエフ)まで運んでくれないか?」「それは無理だ。来週からロシア人を殺す訓練を受けに行くから」

「……」

 その訓練の一端をすぐに目の当たりにすることになるのやが。

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