不肖・宮嶋、最後の戦場取材へ――。
数々のスクープ写真で知られる報道カメラマンの宮嶋茂樹さん(60)。これまでにイラク、北朝鮮、アフガニスタン、コソボなど海外取材を数多く経験し、あまたのスクープ写真を世に問うてきた。そんな不肖・宮嶋がロシアの軍事侵攻に揺れるウクライナへ。混乱する現地で見えてきた「戦争の真実」とは?
(シリーズの4回目/最初から読む)
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いまだ戦火収まらぬどころか、着々とロシア軍はウクライナの首都キエフを包囲しつつある。そんな東部戦線から約500キロ西に離れたポーランド国境ちかくの街リビウ。今でこそ空襲警報鳴り響く日はあるものの、いまだ空爆の被害も見受けられないし、ロシアの地上部隊が現れたという情報ももたらされていない。
とはいえ相手は世界一の広大な国土を誇りながら、中国と北朝鮮以外の世界中の国々を敵に回しても、この日本列島の1.6倍の面積のウクライナの国土を我が物にしようとしとるのである。まずは首都キエフを、次は南部黒海沿岸の保養地オデッサを。そして、さらなる領土を求めて西へ西へ、ここリビウにもやってくるはずである。いやいやそんなことにならんよう、腕に覚えのある兵(つわもの)どもは今からでも前線に向かうのである。
わが身一つ守るために、人はためらわず銃を手に取る
今やウクライナには国民総動員令が発令されたのである。ウクライナにいる18歳から60歳までの男は全員、兵役にあろうがなかろうが、この地にとどまり、侵略者どもと戦わなければならない。
仮に「祖国を守るため」「自由と平和のため」そんな大義なんぞなくとも、わが身一つ守るために人はためらわず銃を手に取るのである。そして愛する家族や友が殺されようもんなら、昨日まで虫も殺せなかった男が敵に銃口を向けるようになる。そして憎悪はお互い増幅していく。それが戦争や。
相手は国際条約も国連決議も通じない
まあしかし、この戦に関してはどう見てもロシアに大義はない。プーチンの言葉は単なる詭弁に過ぎんやろ。強力な軍隊を自由にできる大国の権力者がオノレの自由にならぬ小国を蹂躙しとるだけである。そしてこの大地にすでに双方の大量の血が流れても一向に意に介さないのである。こんな奴に限って自分の痛みには敏感なもんや。