不肖・宮嶋、最後の戦場取材へ――。

 数々のスクープ写真で知られる報道カメラマンの宮嶋茂樹さん(60)。これまでにイラク、北朝鮮、アフガニスタン、コソボなど海外取材を数多く経験し、あまたのスクープ写真を世に問うてきた。そんな不肖・宮嶋がロシアの軍事侵攻に揺れるウクライナへ。混乱する現地で見えてきた「戦争の真実」とは?

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 戦場と化したウクライナであるが、前線から離れ、ポーランドとの国境近くの西部の街、ここリビウでは今はなんとか、かろうじて、上辺だけやが平和に見える。前線では銃声、砲声に包まれ、逃げ惑う市民の悲鳴や武運拙く侵略者どもの敵弾に倒れ、深手を負った将兵のうめき声が溢れかえっているに違いない。

戦って倒れた将兵や、戦災孤児に祈りを捧げる教会

 リビウで戦争を実感できるのは毎日のように町中で轟く空襲警報とここ聖ペテロ聖パウロ寺院である。

 聖歌隊が奏でる聖歌の荘厳な雰囲気のもと、芸術的価値も高い壁画の内装を誇るこの教会はウクライナの戦死者や戦災孤児などのための由緒正しき教会であり、ローマ・カトリック教会の一派を成すという。

聖ペテロ聖パウロ寺院では戦争の犠牲者の追悼ミサが開催された 撮影・宮嶋茂樹

 ウクライナ版靖国神社という言い方が適切かどうか分からないが、とにかくお国のためウクライナ人を守るために戦って倒れた将兵や戦災孤児に祈りを捧げる場なのである。

ウクライナ軍の制服に身を包んだ将兵や戦災孤児の写真も飾られていた 撮影・宮嶋茂樹

 ほかのカトリック教会との大きな違いはキリスト像や聖マリアの肖像がかけられた壁面が軍用カモフラージュネットに覆われていることである。多くのウクライナ軍の制服に身を包んだ将兵や戦災孤児の写真に囲まれている花束もあった。その花をいける花瓶は機関砲の空薬きょうに色が塗られたものだった。