1ページ目から読む
2/2ページ目

「悪魔はあの男一人、ロシア兵もその男に騙された迷える子羊」

 そしてこの日は日曜日。1000人以上の信者が今回のロシア軍の侵攻で犠牲になった将兵に祈りを捧げるために集った。ミサは朝2回と午後1回行われたが、午前最後のミサを仕切ったのは、この前日キエフから脱出してきた司教だった。

 司教は、祖国がロシア軍に蹂躙され、家族同様の信者が多く犠牲になってるにもかかわらず、それを「許せよ」と説いた。そして「悪魔はあの男一人であって、ロシア兵もその男に騙された迷える子羊だ」というのである。

ミサが終わってから現役のウクライナ女性兵士が祈りに訪れた 撮影・宮嶋茂樹

 司教のミサが終わってしばらくして、旧ロシア製のヤズの軍用車両が教会前に止まった。中から迷彩服姿の女性将校がゆっくり降りてきては、腰から下げていた拳銃を車内に残し、教会の中に進んでいった。そして祭壇の前で膝を折り、短い祈りを捧げたあとすぐに出て行った。彼女が祈ったのは死んでいった同胞の安眠か、自身への神の加護だったのか。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。