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 相手は国際条約も国連決議も通じない。そんな凶暴な輩に襲われているウクライナの民にきれいごとなんぞ、聞く耳持ってくれんぞ。殺らなければ、殺される、住む家も財産も、この大地も、自由まで無慈悲に奪われるのである。この戦に敗れてしまうと。

若者たちも蟷螂の斧と知りつつ銃を手にする

 とはいえ相手は世界有数の軍事大国である。しかも核弾頭6000発以上保有し、それを今にもこの地に落とすとウクライナの民や国際社会をびびらして喜ぶ輩である。それでもそれでも、ある老兵たちは昔取った杵柄で、また若者たちも蟷螂の斧と知りつつ銃を手にする。泥縄と自覚しつつなんとか敵に一矢報いんと手練にお教えを乞い、ファイティング・スピリッツを呼び起こし、微力と知りつつも前線に向かっているのである。

民間人や予備役(軍人)が戦闘訓練を自主的に受けていた 撮影・宮嶋茂樹

どんな部隊に回っても、即戦力として使えるように

 ここリビウ市の施設でも市民ボランティア団体が退役軍人を招き、銃の取り扱いという基本動作から実戦的射撃訓練を受けている。

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 ウクライナは我が国と同じように普段からロシアの脅威にさらされているが、2014年(ロシアによるクリミア併合)以降、我が国と違い、しっかり兵役が義務づけられており、ある一定の兵役期間を終えると職業軍人として正規軍に入隊するもの以外は予備役に回る。

 そして今回のような外国の侵略に対しては直ちに召集がかかる。その数90万である。もちろん現役と予備役の戦力差は歴然である。せやけど近代戦は総力戦である。最前線の兵力だけでは戦できんのはちょっと前までの60キロ以上の伸びきった兵站で動きがとれんようになったロシア軍軍用車両群の停滞ぶりを見たとおりや。

 90万の予備役の何割が原隊に復帰するのか、そうでない者も第一線から後方支援のどんな部隊に回ってもええよう、そしてそこで即戦力として使えるよう訓練に勤しんでいるのである。