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「悲鳴と怒号と嗚咽が絶えない…」祖国ウクライナから脱出する難民と最前線に戻って戦う若者が交錯する街に、それでもあった“束の間の静寂”

「悲鳴と怒号と嗚咽が絶えない…」祖国ウクライナから脱出する難民と最前線に戻って戦う若者が交錯する街に、それでもあった“束の間の静寂”

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2022/03/10

genre : ニュース, 国際

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どうせ今だけだ。こんな真っ白いシーツにくるまって眠れるのは

 30分以上灯火管制下の真っ暗で無人の市内を走り続けホテルに到着した。

リビウ中央駅 撮影・宮嶋茂樹

 真っ暗だった建物から灯りが漏れ、扉が開け放たれた。とりあえず数時間だけの一泊、だけやが、羽田をたって44時間やっとまともなベッドにありついた。しかし戦禍を逃れて難民となり、逃げまどうウクライナ市民は今も恐怖と寒さに震えているはずである。どうせ今だけである。こんな真っ白いシーツにくるまって眠れるのは。アフガンでもコソボでもバグダッドでもそやったやんか。静かに眠れたのはその前の経由地までやったやん。あとはジャリジャリ毛布巻いて、銃声と砲声に眠れぬ夜を過ごしたやんか。

リビウのホテルのベッド

 翌朝朝食にありつき、さらに目が点になった。リビウのホテルの朝食はどっこも8時からである。それは外出禁止令が明ける6時過ぎにならんと従業員が出てこれんからである。しっかし朝食会場のテーブルに並べられたのは新鮮な野菜や果物ばかりかチーズ、ハム、卵までずらりである。ソーセージは熱々やが、なぜかバターだけはなかった。が、そのどれもうまいのである。しかも安い。

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 8年前、今やロシア軍が進駐したドネツクのレストランよりうまい。しかしここまでである。平和な町は。

悲鳴と怒号と嗚咽が絶えなかったリビウ中央駅

 この町を訪れたジャーナリストが最初に取材するリビウ中央駅はすさまじい群衆であふれかえっていた。皆マスクする余裕もない。

 シリアやイラクからでない。ヨーロッパからヨーロッパに流れる難民である。その数すでに170万人以上である。