昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載テレビ健康診断

朝ドラ最終回まで残り僅か ジョーがトランペットを吹く日は来るか――亀和田武「テレビ健康診断」

『カムカムエヴリバディ』(TBS系)

2022/03/12

 NHKの連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』も回を重ね3月上旬で第18週に。4月8日の最終回まで残り僅かだ。

 初回から欠かさず観てるんだから、よほど『カムカム』が好きなんだろう。でも、オイオイ何これはと首を捻るときも多々ある。

 最近では、初代ヒロイン安子(上白石萌音)の兄、算太(濱田岳)が突然の再登場。安子がやっと貯めた開店資金を持ち逃げしたロクデナシだ。途方に暮れた安子が優しいアメリカ人を頼り、結果として娘のるい(深津絵里)を置いて渡米した悲劇の張本人だ。

 30年間、姿を消していた算太がチラッと現れたらば、視聴者は騒然、さまざまな推理と臆測が飛び交った。算太の口から、渡米して再婚した安子の消息も聞けるかもしれないとか。

 京都の撮影所に出入りして、相変わらず胡散臭いハッタリかましてる算太が、撮影所に就職した、るいの娘ひなた(川栄李奈)の素姓を知らず家の前まで行き、中から「るい!」と呼ぶ夫の声を聞き、腰を抜かしたんだろうな、すっと姿を消して、それで終り。

 なんじゃこりゃあ! いかにも意味あり気なシーンをチラ見させ、関心を煽っておいて、ゴミ箱にポイ。視聴者も、そろそろ《伏線と回収》の呪縛から解き放たれる時期だ。下手な伏線なんて時間の無駄。回収を無視して放り投げても、面白いドラマはある。

 しかし私にも関心事がある。るいの夫、錠一郎(オダギリジョー)が再びトランペットを吹く日はいつ来るのか。るいと結ばれ、コンテストでも優勝し、本格デビュー目前のジョーが、突然楽器が吹けなくなり、暗闇の世界に堕ちた。なんでペットが吹けないの?

オダギリジョー ©文藝春秋

 伏線もなし、あまりに唐突な展開だ。あれから30年、ジョーは人の良いオッさんになり商店街にも馴染んだ。賀茂川の川原で小学生の野球練習を見守りながら、ある日、手にしたメモ帳に五線譜をササッと短く記した。鼻歌も微かに歌ったような。優しいお父ちゃんやけど、ジャズのことは忘れてないんや。

 唐突に楽器が演奏できなくなったんなら、あるとき突然またペットが吹けるようになってもいいんじゃないか。コンテストを主催した大手芸能プロの社長(佐川満男)の娘、奈々(佐々木希)が、京都の小さなライヴハウスでジョーが復活したという噂を聞き、実際に演奏を聴いて納得。マイルス級の大物が来日したときに、ブルーノートか何処かで競演って、ありじゃないだろうか。京大西部講堂なら、いうことなし。

 オダジョーもいいけど、るいの恋のライバルであり親友のベリー(市川実日子)が出てくると、ホッコリ笑いと安定感が生まれる。ヒロインの隣には今回もやはり市川実日子がいた。

INFORMATION

『カムカムエヴリバディ』
NHK総合 月~土 8:00~
https://www.nhk.or.jp/comecome/

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー