1ページ目から読む
2/3ページ目

「戦争の対価」を支払わされているのはロシアだけでなく

 例えば、精密機器や排ガス触媒、卑近なところでは虫歯を削った後の詰め物としても使われるパラジウムはロシアが有力な産地ですが、これが半年前に比べてスポット市場で37%急騰(3月7日現在、以下同じ)。みんなが依存している原油、WTI価格は半年前から76%高騰。同じくアルミニウムが58%、ニッケルが118%、亜鉛が39%と、素材価格の高騰で「戦争の対価」を支払わされているのはロシアだけでなく、自由貿易の恩恵を蒙っている日本ほか先進国だという事実が、ここにあります。

 小麦の輸出高で言えば世界の3割弱を占めるロシアとウクライナが戦争をしたことで、小麦はもちろんトウモロコシなど関連食糧もまた高騰し、小麦が78%、トウモロコシが51%値上がりしている状態です。先物相場大好きな私でさえ、真顔になって正座でチャート見ちゃうレベルで大変なことになっております。

©iStock.com

 平たく言えば、みんなが大好きな立ち食いうどんも牛丼も納豆もパスタも、どーんと値上がりする前夜だよね、どーんと。それでいて、お給料そのまま。下手するとリストラ。そういう生活不安を引き起こした要因の片方はコロナだけど、もう片方は間違いなくロシアなので、日本人はウクライナ問題について当事者意識を持つべきだと思うんです。マジで。私の大好きなシカゴ大豆相場なんて、南米の干ばつと中国の大量買い付けで高値になって、1973年以降9年ぶり3回目のブッシェルあたり17ドル越えとか甲子園出場しかねない勢いです。

ADVERTISEMENT

消費者物価もじりじりと上がっていくことは不可避に

 そもそも、それ以前からコロナ禍による操業縮小などで半導体生産が滞ったり、リモートワーク急増で戸建て住宅や改築の需要が勃興し、材木や木製建材が値上がりするウッドショックまで発生していたことを考えれば、常日頃私たちが暮らしている平和な日本経済がいかに幻想の上に成り立っていたのかなんとなく分かろうものです。

 また、輸入する素材や半製品が値上がりしているけど、日本企業からすれば提供価格に転嫁しない限り、企業は利益を削ってしまうことになります。おいそれと値上げができなければ、「企業努力」として賃金を上げない方向にシフトします。でも、素材値上げに耐えかねた企業が徐々に提供価格を引き上げる傾向がすでにみられ、この企業物価の上昇に引っ張られるように、私たちがスーパーやヨドバシカメラ、楽天などなどでモノを買うときの消費者物価もじりじりと上がっていくことは不可避になります。