「デフレ経済」からの脱却とはいえ…
いま、各所で問題となっている「スタグフレーションの恐怖」とは、すなわちコロナやウクライナ侵攻によって上昇した資源価格に釣られてモノやサービスの価格が上昇し、インフレが発生しているのに、国民の生活を支える賃金の伸びは抑えられるため「インフレと低賃金」で身動きが取れなくなることを指します。
もちろん、市場関係者の中には「スタグフレーションほどにはならないかもしれない」と楽観的に思う人はいるかもしれない。でも、企業物価が上がり、事実上インフレ懸念のあるなかで、ゼロ金利なのに給料が上がらないという一般国民からすれば悪夢のような状態に陥ったとき、「大丈夫って言ったじゃないですか」では取り返しがつかないことになります。
インフレが発生しているということは「デフレ経済」からの脱却であり、2%の物価上昇を目指していた俺たちの日本銀行も、自身の金融緩和政策ではなく外国要因のリスクで勝手に物価が上昇しておそらく達成してしまうというのは何とも皮肉な話です。他方で、ゼロ金利で金融緩和しきった状況で、景気は回復しないのに物価は上がっていきます。本来ならば利上げでもしますかというタイミングなのに、利上げしたらさらに景気が悪くなるわけですから、そこにも踏み込めないという実に残念な状況になっているのもいまの日本経済です。
そして、その司令塔はよりによって「新しい資本主義」というちょっと何を言っているんだかよく分からない岸田文雄政権であることを考えると、原油価格の値上がりで国民の生活にダイレクトに響くガソリンの値段やビニールハウス内を暖める灯油もどかんと上がって、トリガー条項でも発動するかというとそういうこともなさそうです。
来月のいまごろは消費者物価がもっと上がるのでは
本来は政治がきちんと日本経済の方向性を示し、具体的な政策に落とし込む道筋をつけてほしいなあと思うわけなんですが、先日経済財政諮問会議が「日本の働き盛り世帯所得、25年で100万円減」とかいうのんびりした報告をしていて、ちょっとなあと思うわけです。いま、目の前が経済危機になりそうなんですけど。スタグフレーションですよ。
どうも、目の前の国民の経済状態や生活の困窮について、いまの政権はあまり生の情報を聞いて政策に反映させようという政治過程がうまく作れていないようです。苦しいのは日本だけでなく、ほとんどすべての先進国で中流世帯の没落が懸念されているのは間違いないんですけれども、資源輸入国で、世界の安全と平和が貿易と観光による収益をもたらし、その利益で良い生活をしている日本をどう舵取りするのか。もう少し明確に見せてほしいなあと思うのです。
たぶん、来月のいまごろは消費者物価がもっと上がって、みんなワイワイ騒ぎ始める時期だと思うんですよ。リフレ派の皆さん、ついに物価上昇してデフレ脱却ですよ。おめでとう。おめでとう。