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30歳過ぎで脱サラ→破産→初小説が300万部の大ヒット…ケータイ小説の生みの親・Yoshi(57)が語る“現在地”

ケータイ小説の生みの親・Yoshiさんインタビュー#1

2022/03/19
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――キャリアの絶頂期にすべてを捨てて石垣島に行ったのはなぜだったのでしょうか。

Yoshi 感覚としては出家に近いですね。小説が当たったあと、六本木ヒルズに越したんです。

 僕はケータイ小説を立ち上げる少し前、30歳過ぎで脱サラして破産もして、米屋をやっている姉夫婦の家に居候しながら、1日500円で暮らしていたんです。

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 その1年半後には『Deep Love』で成功して、メディア業界の裏側を見て、ヒルズ族と付き合って……やっぱり価値観は変わっちゃうよね。

脱サラ、破産からヒルズ族に…成功者の日常

――どん底からの大逆転ですね。野望というか、夢はすべて叶いましたか。

Yoshi 日本一売れる本を作って、ヒルズに住んで、高級車に乗って、おいしいものを食べて。全部叶いましたよ。

©文藝春秋

――2000年ころの六本木ヒルズといえば、ホリエモンが思い浮かびます。

Yoshi エイベックスの松浦勝人さんとは毎日のように飲んでましたね。当時ライブドアだった堀江貴文さんやサイバーエージェントの藤田晋さん、ひろゆきさんが来ることもありました。青山とか六本木の小さい個室にぎゅうぎゅうに入れられてねえ。

――そうそうたるメンバーですね。でもそんなきらびやかな日常は馴染まなかったですか。

Yoshi 刺激的ですよね。当時日本で一番有名なビジネスマンたちが集まってるんですから。

 ただ、これは別に他の人を下に見ているとかそういう意味ではなく、「別にたいしたことないな」と思っちゃったんですよね。

漫画版『Deep Love アユの物語』(作画:吉井ユウ、講談社)

――成功者としての日常が「たいしたことなかった」という意味でしょうか。

Yoshi そうですね。山の頂上からはどんな景色が見えるだろうと思って登ってみたけど、達成してみたらたいしたことなかったというか。もちろん、成功者といるのは楽しいんですよ。彼らは理屈じゃなく直感的に生きている人たちだから、言うことはぶっ飛んでるし、僕も直感に従って生きるタイプなので、居心地はいいんですよ。

――飽きちゃう、みたいな感じですか。

Yoshi 正直、年収が1億円を超えると使いきれないんですね。お金を増やすことにモチベーションを感じる人ならいいかもしれないけど、僕はそこに喜びを見出だせなかったし、10年の間に業界の“色”に染まってしまって、純粋に作りたいものを作れなくなっていた。それでもういいやと、出家したんです(笑)。

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