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出家のきっかけは「月9」だった

――作りたいものを作れなくなっていたというのは、業界的な話でしょうか。

Yoshi 僕、出家する直前まで「月9」の脚本を書いてたんですよ。「3.11」前でしたが、子どもができたことで核爆弾を日本中に配置しているような原発の存在が気になって、原発をテーマにドラマを書いてたんですね。

――「月9」枠で原発とは、かなり社会派ですね。

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Yoshi ちゃんとそれまでのドラマを意識して書いてあげたのに、何かにつけて局の言いなりになるようなことを求めてきたので、やめちゃいました。

 その前にやった映画も、脚本があまりに面白くなかったので「降ります」と言ったら、「この業界で干されるぞ」と、テレビ局のプロデューサーからさんざん脅しを受けました。

©文藝春秋

――ストレートに脅迫ですね。

Yoshi 自立したいから脱サラしたのに、業界に飛び込んで待っていたのは自立とは真逆の、さまざまな縛りでした。

 だから、商業ベースに乗ったものは作れるんです。それで大金が手に入ったり名前が売れたりはするかもしれないけど、心情的には全然やりたい仕事じゃなかった。で、自分の直感を無視したチョイスって、だいたい間違えているんですよ。

――ではもう一度小説を書きたいとか、エンタメ業界に戻りたい気持ちはないですか。

Yoshi 全然ないですね。というか、自分が小説家だって意識もないです。そもそも生涯に読んだ小説も10冊くらいしかなくて。読むもの好きじゃないです。

――その10冊が気になります。

Yoshi 歴史が好きだったから司馬遼太郎ですね。小説を読んでいるというより、歴史を知りたくて読んでいる感覚ですよね。

©文藝春秋

「iモード」に感じた可能性、ケータイ小説を書いたわけ

――ますますYoshiさんが、なぜ「ケータイ小説」を生み出せたのか不思議に感じます。

Yoshi ドコモのiモードを見たとき、直感的に「これはすごい」と感じました。手の中にある小さな電話から世の中につながれるなんて、世界は絶対に夢中になるはずだと確信して。

 それでも当時、周りの人に「俺、ケータイでビジネスをやるんだ」と言ったら、「お前、狂ってるよ」と言われましたけどね。

――「小説」がやりたいこととしてあったわけじゃなくて、「iモード」というコミュニケーションツールにビビッときたんですね。

Yoshi 最初はiモードのカテゴリに「小説」はなくて、あるのは「占い」「天気」「着メロ」みたいな。ここに何十万、何百万の人が集まると思っていたので、じゃあそこで何をやるのがいいかと考えたとき、直感で「小説」と思ったんです。