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30歳過ぎで脱サラ→破産→初小説が300万部の大ヒット…ケータイ小説の生みの親・Yoshi(57)が語る“現在地”

ケータイ小説の生みの親・Yoshiさんインタビュー#1

2022/03/19
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「ストーリー自体は5分くらいで考えた」

――集客装置としての「小説」だったんですね。

Yoshi 占いって日々更新されるものでない限り、一度やったら二度そのページには戻ってこないですよね。それはとても大きな機会損失になるので、一度見に来た人が継続的に訪れるページにするにはどうすればいいかと考えて、パッと浮かんだのが小説でした。

『Deep Love』のストーリー自体は、5分くらいで考えたものです。

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――5分で考えたストーリーが一大産業になったんですね。凡人には想像ができないです。

Yoshi 自分はもともと予備校の講師だったんです。長らくNo.1講師だったのですが、生徒の「やる気スイッチ」をONにする“メッセージの伝え方”みたいなノウハウもあったし、塾経営にも携わっていたのでビジネス的なスキームもあった。成功したのはそこがうまく噛みあったからかなと思います。

©文藝春秋

 今ならYouTubeになると思いますけど、同じことをやっているんですよ。要はプラットフォームがYouTubeなのかiモードなのかの違いだけで、それをどう利用するかという話だったのでね。

――『Deep Love』はビジネス的な戦略のもとに生まれていたんですね。

Yoshi 正直、作家を目指していたわけでもなく、活字離れを解決しようみたいな崇高な思いもさらさらなかった。

 でも本が売れない時代に、当時の本屋や出版社に対して貢献できたんじゃないかな。それに、『Deep Love』があったから『恋空』や『赤い糸』が生まれたという自負はあります。

「なんで成功できたんですか?」と聞かれたら

――「魔法のiらんど」から発表された『恋空』も『赤い糸』も、映画化されるほどヒットしました。それはYoshiさんが「ケータイ小説」という新しい文化を創出したからこそ生まれた作品ですよね。

Yoshi 自分がやりたかったことって、小説を書くことじゃなくてムーブメントを作ることだったんです。僕の本だけでも累計で1000万部売れて、後続のケータイ小説を入れたら何千億円という産業になった。

 金とか名誉とかじゃなくて、世の中にまったく新しい波を起こせたこと、それが一番自分としては嬉しかったことですね。

――スマホやSNSというフィールドでもう一度新たなカルチャーを生み出したい、みたいなお気持ちはないですか。

Yoshi iPhoneは大好きだけど、そこでやることが直感的に思い浮かばないということは、もうそのフィールドでは俺に才能がないってことなんですよ。

 だから「なんで成功できたんですか?」と聞かれたら、「できないことに手を出さなかったから」ということに尽きると思いますね。

写真=山元茂樹/文藝春秋

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