「ストーリー自体は5分くらいで考えた」
――集客装置としての「小説」だったんですね。
Yoshi 占いって日々更新されるものでない限り、一度やったら二度そのページには戻ってこないですよね。それはとても大きな機会損失になるので、一度見に来た人が継続的に訪れるページにするにはどうすればいいかと考えて、パッと浮かんだのが小説でした。
『Deep Love』のストーリー自体は、5分くらいで考えたものです。
――5分で考えたストーリーが一大産業になったんですね。凡人には想像ができないです。
Yoshi 自分はもともと予備校の講師だったんです。長らくNo.1講師だったのですが、生徒の「やる気スイッチ」をONにする“メッセージの伝え方”みたいなノウハウもあったし、塾経営にも携わっていたのでビジネス的なスキームもあった。成功したのはそこがうまく噛みあったからかなと思います。
今ならYouTubeになると思いますけど、同じことをやっているんですよ。要はプラットフォームがYouTubeなのかiモードなのかの違いだけで、それをどう利用するかという話だったのでね。
――『Deep Love』はビジネス的な戦略のもとに生まれていたんですね。
Yoshi 正直、作家を目指していたわけでもなく、活字離れを解決しようみたいな崇高な思いもさらさらなかった。
でも本が売れない時代に、当時の本屋や出版社に対して貢献できたんじゃないかな。それに、『Deep Love』があったから『恋空』や『赤い糸』が生まれたという自負はあります。
「なんで成功できたんですか?」と聞かれたら
――「魔法のiらんど」から発表された『恋空』も『赤い糸』も、映画化されるほどヒットしました。それはYoshiさんが「ケータイ小説」という新しい文化を創出したからこそ生まれた作品ですよね。
Yoshi 自分がやりたかったことって、小説を書くことじゃなくてムーブメントを作ることだったんです。僕の本だけでも累計で1000万部売れて、後続のケータイ小説を入れたら何千億円という産業になった。
金とか名誉とかじゃなくて、世の中にまったく新しい波を起こせたこと、それが一番自分としては嬉しかったことですね。
――スマホやSNSというフィールドでもう一度新たなカルチャーを生み出したい、みたいなお気持ちはないですか。
Yoshi iPhoneは大好きだけど、そこでやることが直感的に思い浮かばないということは、もうそのフィールドでは俺に才能がないってことなんですよ。
だから「なんで成功できたんですか?」と聞かれたら、「できないことに手を出さなかったから」ということに尽きると思いますね。
写真=山元茂樹/文藝春秋
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