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「援助交際は、穴のレンタル」と少女は言った…累計1000万部「ケータイ小説の生みの親」がゼロ年代に支持されたわけ

ケータイ小説の生みの親・Yoshiさんインタビュー#2

2022/03/19
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――たしかにガラケーで難解な長文を読むのは厳しいですよね。

Yoshi どんどん高度で難解になっていったゲーム業界に『パズドラ』が出てきて大ヒットしたみたいに、小説が文学になり、芸術の域まで達したとき、「誰も読めないよ」となる。

 僕がやったことは『パズドラ』と同じで、小説を「誰でも楽しめる娯楽に引き戻す」ことだったんですよ。

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ケータイ小説家として成功できた理由

――Yoshiさんの狙いが時代や業界にぴったりあってたんですね。

Yoshi 予備校の講師や米屋の手伝いをしてきて、業界を何も知らない自分がなぜそこで活躍できたのかといえば、「水を得た魚」だったからだと思います。

 小説を出して映画の監督もやって脚本も書いたし、作詞もしました。だけどそれまで僕は映画監督になる勉強もしたこともないし作詞だってやったことはなかったわけで。

――作詞は、倖田來未さんの『flower』ですね。オリコンチャート4位に入った、ヒットソングです。

Yoshi 詞を考えた時間は4、5分です。なにか練習したわけじゃなくて、思い浮かんだものをそのまま出しただけです。

 自分が苦手なことって、アイデアを思い浮かべることすら難しいんです。でも逆を言えば、直感で思い浮かべる事ができれば、もうそのジャンルで才能があるってことなんですよ。

©文藝春秋

――好きや得意を生かせばいい、ということですね。

Yoshi 僕は今57歳で3歳の子どもを育ててるんです。その子を見ていると分かるんですけど、子どもって周りの雑音を気にすることなく、直感的にものを選びますよね。僕の子は機械が好きみたいで、ねじなんかをじーっと見てる。それこそが信じるべきもので、自分の本当の心の声=直感なんだと思うんです。

 でも大人になるにつれ、多くの人は、自分の心の声より常識や人の意見、富や名声に惑わされていってしまう。だからこそ、心の声を聞くための「リセット」が必要なんです。

――そのための「破産」や「石垣島」だったんですね。

Yoshi そうです。みんな魚なのに飛ぼうとするような、無茶な努力をしているからつらいんです。自分に合ってない生き方をしてるんですよ。

 でも嫌われたくないから、部下や友だちに「お前、才能ないよ」と言ってあげられないでしょ。だから僕は今そういうメッセージを伝えるための本を書いてるんです。それが自分の最後の仕事かな。それこそ、「セミナーなんか受けるから成功できないんだセミナー」とか、やってみたいですね(笑)。

写真=山元茂樹/文藝春秋

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