もともとエリツィン政権下のロシアのネット空間は、ほぼ西側と変わらない自由な雰囲気の言論空間だった。しかしプーチン政権発足後、急速にロシア民族主義・愛国主義が拡散される場に変化した。FSBの介入によるものと見ていいだろう。
SNSは愛国主義を宣伝するメインエンジン
ロシア語の記事しか読まない普通のロシア国民が普段読んでいるような大手のニュースサイトにも、プーチン政権が流す“ウソ”がちりばめられた。SNSでも、2006年に設立されて、2016年にはロシア最大規模に成長した「VK」(フコンタクテ)などは、もはや愛国主義を宣伝するメインエンジンのような役割を果たしている。
それでも都市部の若者を中心に、海外のサイトを見るような層はおり、彼らを中心に民主化運動が起きた。プーチン大統領はそれを徹底的に弾圧するとともに(指導者は毒殺未遂。現在は収監中)、2019年3月に「フェイクニュース禁止法」を成立させた。
これはロシア政府がフェイクと判断した情報をネットに書き込むことを取り締まる法律で、政府に都合の悪い真実を書き込むネット言論が違法となった。また同時に国家の権威、すなわちプーチン大統領を侮辱する書き込みも違法になった。これもまさに「ヒトラー崇拝」の再現である。
今回のウクライナ侵攻で、プーチン政権はさらに徹底的な言論統制を打ち出している。2022年3月4日、先の法律より徹底した取り締まりを目指す「フェイクニュース法」を成立させた。海外のメディア記者も含め、ロシア国内で当局の意に沿わない情報を流すと長期刑を含む刑罰が科されることになったのだ。
無茶苦茶な言論統制だが、それだけプーチン大統領は来るロシア経済の壊滅的ダメージを前に、メディア統制を重視しているということだろう。