小中学校で銃器の扱いを教える「軍事教育」導入
2016年2月、プーチン大統領は、「教育とメディアによって愛国心を広める」ことを国の唯一の指針と宣言した。その後、ロシアの小学校や中学校では「愛国教育」との触れ込みで、銃器の扱いも含めて基礎的な軍事教育をイベント形式で教える試みが始まっている。
愛国主義を前面に立てたソ連復活は軍にも及んでいる。2018年7月、ロシア軍内に新たに「軍事政治局」が設置され、軍内での愛国主義の徹底が指示された。かつての旧ソ連軍内にあった政治総本部の復活そのものだ。
疲弊した国民に耳障りのいい民族主義・愛国主義を扇動し、「悪いことは全部、他者のせいだ」として攻撃することで国民的人気を集める。ヒトラーとまったく同じである。そして、人気を集めて権力を握った後は独裁者となり、反対・批判する者を弾圧する。その手口の流れまでヒトラーのコピーと言っていいだろう。
さらにもう一つ、ナチスと酷似しているのが、メディア支配による巧みな国民洗脳の手法だ。
「メディア王」を弾圧 大手メディアを“宣伝機関”に
かつてナチス政権は、ヨーゼフ・ゲッベルス国民啓蒙・宣伝大臣を中心に徹底したメディア統制を行い、ヒトラー崇拝をドイツ国民の隅々まで行き渡らせた。プーチン大統領も同じようなメディアを利用した宣伝を、権力者となったと同時に始めている。彼の場合、ナチスを参考にしたというより、旧ソ連で思想統制を行っていたKGBの手法を復活させたということだろうが、結果的に「やったことはナチスと同じ」だ。
プーチンが大統領に就任したのは2000年5月だが、翌6月にウラジーミル・グシンスキーという人物を逮捕した。グシンスキーは全国ネットのテレビ局など多数のメディア企業を所有し、「メディア王」と呼ばれていた人物だが、それにより彼のメディアはすべてプーチン政権の支配下となった。それを足がかりにプーチン政権は国内の大手メディアを次々と支配し“宣伝機関”とした。
こうして国内のメディアをほぼ統制したプーチン政権は、前述したロシア民族主義・愛国主義の宣伝を強力に進め、国民の洗脳に励んだ。とくにテレビに情報源を頼る地方在住の中高年層は、プーチン政権が流す創作された「物語」(悪いのは米国だ、など)だけを目にすることになった。
本来は自由な言論空間であるはずのネットでも、同様のことが起きた。