「家族仲は抜群で、自慢できるほど良かった。頭が現実逃避して、今でもまだ夕輝が部屋にいる気がするんです。末っ子で明るくて、優しくて――」
涙を堪えながら父が話す、静まり返った昼下がりの自宅リビングには、精悍な顔立ちをした浜田夕輝さん(21)の真新しい遺影と位牌が飾られていた。
他に手元にあったのは、幼い姪とテレビを一緒に見る写真、祖父母と草津温泉に行った写真、ケーキを前にピースする誕生日の写真、姉の結婚式の写真……。家族写真のどれもが、浜田さんの優しい笑みで溢れている。
そんな、皆に愛された彼の命は2月19日、理不尽にも奪われてしまう。
ナイトクラブ脇で起きた“集団リンチ事件”
茨城県土浦市のナイトクラブ脇の資材置き場で2月12日、浜田さんが集団リンチに遭い死亡した事件。茨城県警は3月9日までに、浜田さんに暴行を加え死亡させたとして、鴫原大地容疑者(22)、マツセ・キタ容疑者(22)、小川大輔容疑者(22)、中嶋敦生容疑者(22)、中茎凌太容疑者(22)、19歳の少年3人ら計8人を、傷害致死などの容疑で逮捕した。
8人は地元・土浦の不良グループなどとされ、クラブで口論になった後、浜田さんを外に連れ出し、殴る蹴るの暴行を加えたという。
浜田さんは搬送時には既に意識がなく、1週間後に死亡が確認された。
浜田さんの命は、なぜ奪われなければならなかったのか。取材班は浜田さんの父親Aさんに接触。Aさんは「遺族の悲痛な思いを知って欲しい」と取材に応じた。
父が語る被害者の素顔は…
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「午前2時頃に目が覚めてトイレに行った時、夕輝が帰って来てないことに気づきました。連絡もなく外泊することはなかったので、何をしているのかと心配してたんです。そうしたら午前4時頃、夕輝の携帯番号から急に電話がかかってきて……。友達の声で『大変なことになっています』と。慌てて土浦に向かおうとしたら、病院からも電話が来て『もう助かりません』と言われました」
唐突過ぎる、悲劇の訪れだった。Aさんが朝6時頃に搬送先の病院に着くと、浜田さんは集中治療室におり、医師らの懸命な治療が続けられている最中だったという。