“世界一のドーナツスピン”や華麗なトリプルアクセル、海外の審判員から「クレイジーガール」と言わしめた攻めのプログラム構成——引退から12年経ったいまも、元フィギュアスケーター・中野友加里さん(36)の姿が記憶に焼きついている人は多いのでは。
2010年に現役を引退し、2児の母となった彼女は現在、YouTubeでの発信や審判員の仕事を通して再びフィギュアスケートに携わっている。そんな中野さんに、今回の北京オリンピックや自身のフィギュアスケート人生について話を聞いた。(全2回の1回目/後編に続く)
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手に汗握りながら観戦した北京オリンピック
――今回の北京オリンピックはご覧になりましたか?
中野友加里さん(以下、中野) はい。お昼の試合もあったので、子どもたちと一緒に。フィギュアスケートの女子フリーは夜遅くて子どもたちは寝てましたけど、私は手に汗握りながら観戦しました。
もちろん日本人なので日本代表を応援するんですけど、海外の選手も含めて「みんな自分の力を十分出し切れますように」と祈るような気持ちで……試合中はそれぞれの選手からすごい気迫を感じて、鳥肌が立っちゃいました。
――解説の織田(信成)さんは号泣されていましたね。
中野 彼はいつでも、どこでも泣くの! 私の結婚式のときは、式が始まる前から泣きそうでしたよ(笑)。それが彼のいいところであり、“愛されキャラ”である理由なんですよね。
――(笑)。中野さんから見た、いまの現役選手たちの印象は?
中野 私たちの頃とは比較にならないくらいスケーティングの質が上がりましたし、特に表現力のレベルが高いです。
音楽をしっかりと解釈して、いかに曲の世界観やストーリーをパフォーマンスで表すか。いまの選手たちはそういった面が素晴らしいなと感じますね。
私なんて、若いうちはただ曲に合わせてジャンプを跳べばいいと思っていて(笑)。表現力を意識するようになったのは、20歳を過ぎたあたりかな。
――フィギュアスケートの選手たちは演技中、どんなことを考えているんですか?
中野 私の場合は、「最初の技がダメだったら、次はあの技を入れて……」って必死に頭の中で計算しながら演技していました。顔だけは笑顔なんですけどね。
もちろん、どんな状況になってもミスをカバーできるよう、日々音楽に合わせてトレーニングを重ねています。それでも、自分より前に滑った選手の演技内容や会場の雰囲気にメンタルが影響されることもある。試合って、なにが起こるかわからないんです。