養子縁組、里親制度の闇
しかしながら、そんな成功物語ばかりではない……とつぶやくのは、カレッジで子供たちの世話をする職員のリーダー、レベッカだ。
彼女は言う。
「私たちは一生懸命に向き合い、子供たちのトラウマ治療や、発達遅延の取り戻しに取り組んでいます。でもその子供たちが、養子縁組や里親先から戻されてしまうことも非常に多いのです。まるで商品を返品するように……」
私は言った。
「試しに買って、気に入らなければクーリングオフということですか?」
レベッカは深いため息をついた。
「そう。子供が一生懸命に治療に専念しても、養子縁組や里親になる人たちの勉強不足や覚悟のなさが深刻なのです。子供たちは再び捨てられてしまう。そして、再び人を信じなくなる。すべてがリセットされてしまうのです」
この施設に戻されるのはまだいいほうだと、彼女は言う。それならリセットされてもまた治療を始められる。
問題なのは、養子縁組先や里親先で人知れず不幸になることだ。
アメリカでも、養子縁組に対する法律は今なおよく整っているとは言えない状態だ。養子縁組をするとき、その仲介者にはその後の責任がない。また、追跡義務もない。そのため、養子縁組後の子供がどのようになったのかわからないケースが多々あるのだ。
それに、養子縁組で引き取った子供は簡単に手放すことができる。他の養子縁組希望者に譲渡できるのである。
インターネットには、犬や猫の譲渡案内のように子供たちの顔写真がリストアップされている。それを規制する法律はない。そのため、家を転々とさせられる子供が非常に多いという。
彼らはリホーミングチルドレン(Re-homing Children)と呼ばれる。これも現代のアメリカ社会における深刻な問題のひとつである。
リホーミングという、履歴のたどりにくい譲渡を繰り返すうち、子供が再び虐待に遭ったり性的暴力を振るわれたりするケースは少なくない。