東日本大震災から11年を迎える直前だった。警視庁組織犯罪対策三課は、復興支援を看板に掲げた電力会社「福島電力」元社長、宮川真一容疑者(46)を業務上横領容疑で逮捕し、3月9日発表した。宮川は「記憶にありません」と容疑を否認しているという。

福島電力元社長の宮川容疑者(FNNプライムオンラインより)

 警視庁担当記者の話。

「宮川が横領の疑いをかけられたのは、会社の資金約220万円を、同社元幹部のA(36)が被告となっていた別件の詐欺事件の弁護士費用に充てていたから。実はAこそ、警視庁が見立てる事件の首謀者です」

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 Aは偏差値70の名門高校を卒業後、大学には進学せずに、光通信に入社。独立後は若手起業家として一時はメディアにも登場した。だが、みずほ銀行から融資を騙し取った詐欺事件で13年に大阪府警に逮捕され、執行猶予判決が確定。新たに乗り出したのが電力ビジネスだった。

 福島電力は16年に電力小売りの全面解禁とともに設立。原発事故で警戒区域に指定された楢葉町に本社を置き、電気契約を福島電力に乗り換えると、料金が安くなる上に一部が福島の復興支援に充てられる新たなプランが注目を集め、契約数を伸ばしていた。積極的な営業で契約数は一時、5万件を超えていたという。

「この福島電力を実質的に差配していたと見られるのが元幹部のAです。当時は経営も順調にみえましたが、18年8月に突然、破産した。遅くとも18年4月以降、約3億5000万円の使途不明金が発生していることが判っており、今回の220万円は、使途の判明した氷山の一角です」(同前)