不肖・宮嶋、最後の戦場取材へ――。
数々のスクープ写真で知られる報道カメラマンの宮嶋茂樹さん(60)。これまでにイラク、北朝鮮、アフガニスタン、コソボなど海外取材を数多く経験し、あまたのスクープ写真を世に問うてきた。そんな不肖・宮嶋がロシアの軍事侵攻に揺れるウクライナへ。混乱する現地で見えてきた「戦争の真実」とは?
西部の都市リビウから医療物資を運ぶフォード社製の大型車両に同乗させてもらい、不肖・宮嶋は首都キーウ(キエフ)へと向かう―ー。
(シリーズの7回目/前回を読む)
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いくらアメ車でも後ろにこれだけの積み荷があれば、速度をだせるわけもない。そして、めったにすれちがわん対向車ぐらいである、灯りが見られるのは。
ロシア軍地上部隊が侵入した東部戦線まではまだ距離があるが、幹線道路はバリケードと土嚢がいきなり現れる。すぐにヘッドライトを消し、代わりに室内灯を点け車内に何人乗って、かつ武装してないことを示し、ハザードランプをさらに焚き、停車する。
その辺の民間人も含めて極めて士気が高い
ハザードが点滅するたびに、いったいこんなでかいもんをどうやって? ていうぐらいでかい、重そうなコンクリートの塊のバリケードや太い鉄製の対戦車柵がゴジラ映画のように浮き上がる。すでに街灯もなく真っ暗、完全武装の兵士が銃の引き金に指をかけたま近づくのがハザードランプの点滅のたびに、コマ落としのアニメのように見える。
もはやウクライナ軍と信じるしかないが、彼らも怖いはずである。こっちも不自然なあやしい行動に見られないよう、極力動かない。しかしかれらも人間である。一向に暖房が効かないフォード車内ですら震えるくらい寒い。幸い雪はやんでいるが、ドラム缶から炎が上がり、周りにこれまた完全武装の兵士が体を左右に揺らしながら両手を炎に当てているのがシルエットで見える。
さっきのドライブインでマイナス4度、林の中でさらに気温は下がっているとはいえ、敵から見たら炎はかっこうの目標になる。おそらく正規軍でなく、予備役を召集して再編された領土防衛隊であろうか? さらに今は政府が武器をばらまき民兵や自警団、さらに日本も含めた外国からの義勇兵と様々な組織が混在している。しかし、それらがお互いうまく連携しながら不足分を補いあっているように見える。そしてその辺の民間人も含めて極めて士気が高い。