勝利の美酒を味わうまでは臥薪嘗胆の覚悟
ウクライナ黒海沿岸はワインの名産地であること、ワシの好物のウオッカはここではネミロフというブランドがあり、それはロシアオリジナルウオッカの安っぽい味ではなく、もっとピュアーなテイストだとか、つまみはオリーブがええやのタマネギやの……で、最後に「今は町では飲めないからうちで飲もう」とならないのである。
こちらの下心を見透かしているのではない。「我々の勝利のあと好きなだけ飲ませてやる」となるのである。
今ウクライナに残り、侵略者と戦うものは老若男女かかわらず勝利の美酒を味わうまで臥薪嘗胆の覚悟なのである。ここがロシア軍との大きな違いであろう。グルジアでもロシア軍支配地域を通るたびにタバコ1カートンを指揮官に渡した。樺太地震では立ち入り禁止エリアに入るのにウイスキー1本渡すと、それは出るまでにすっかり空になっていた。
これは、ウクライナはやりこますのではなかろうか、日本にいては決してわからぬ彼らの闘志、これは日露戦争の我が先人らが成し遂げたような劇的な結果を見るのではなかろうか、そんな予感が強まるばかりだった。
次、目の前に現れる検問所は再びウクライナ軍なんやろか?
しかし、精神論に陥るは日本人としては厳に慎むべきところである。そしてそんな楽観論は夜の闇が一瞬で消し去る。
フォードのタイヤが路上に開いた穴に落ち込み「バン!」とバウンドしただけで悲鳴があがる。
林を抜け検問所を通り、集落にはいったはずやのに、全く灯りどころか人の気配がせんのである。当然この村やコミュニティーに灯火管制の命令が出ているのであろうが、ルスランのアクセル踏み込む足がためらいがちになっている。次目の前に現れる検問所は再びウクライナ軍なんやろか? そんな保証がどこにあるんやろか?
「怖い……」
再び40号線に戻った。
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