松坂桃李 ©文藝春秋

 NHKは“意識高い系ドラマ”をつくる。内容にも絵づくりにも凝りまくる「意識の高さ」。それが「お茶の間」へ入り込んできた嚆矢が『カーネーション』ではないかと思っていて、ああいう念の入った「お洒落なドラマ」を半年見せられて「さすがNHKは違う」と思いつつも「こういうこまやかでお洒落でかつちょっと笑わせるようなドラマをつくって陶酔してんじゃないか」とイヤな気持ちになって、以降ずっと「反・カーネーション系」を自覚している。『トットてれび』とかね。なまじ、手をかけられてることがわかるから、こういうのはイヤだというこっちがオカシイみたいだ。……じっさいオカシイのかもしれんが。

 そんな私が安心して見られる『わろてんか』。「ていねいお洒落臭」いっさいなし!

 そういう点で神経にひっかからないので朝のドラマとしてはとても良いのでありますが、問題は「内容もひっかかりがない……」ことです。ええと要するにちょっと……話が……面白くない……。

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 吉本興業の創始者がモデルだというんでそのつもりで見てたが、それよりもっと『夫婦善哉』というか、ナニワのアホ亭主としっかり者のヨメの図式そのもので、でも『夫婦善哉』読むとわかるけどイイ話みたいだけど割とエグイし。亭主のダメさや、ヨメはんの気の強さとか。

『わろてんか』はとにかくそのへんぬるくて、松坂桃李のアホ亭主の、あのゆるいアホさは「こういうのがダンナだったらやっかいだ……」としみじみ思わせるからまあいいとして、主人公であるてんちゃんも、可愛いけどボンヤリしてて、これは松坂桃李と対するには母親役の鈴木京香のほうが話が転がるとしか思えず、これではてんちゃん脇役で終わっちゃうよどうすんだ、いや、言ってる間に鈴木京香は唐突に海外に去ったし、松坂桃李も早晩死んで去って「ボンヤリで可愛いてんちゃんの細うで繁盛記」が展開する……とは思うもののどうにもそういう転がり方をするように思えないんだ、今のユルユルなボンヤリした登場人物全員の人物造形やストーリーの展開では。

 死ぬ前に松坂桃李が、今までから想像もつかないぐらいの大放蕩とか大失敗とか大損とか、狂気を感じさせるぐらいのことをしでかしてくれないかと期待している、けどたぶん死ぬまでゆるいアホなんだろうなあ。松坂桃李の狂気の放蕩男、絶対似合うのに。

▼『わろてんか』
NHK総合 月〜土  8:00〜8:15