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 救急指定の2病院は停電で十分な機能を発揮できない恐れがあることから、「出血を伴うようなケガの場合は、避難所として開設した第2体育館で応急治療を行います」とも放送した。

災害指揮をとりながら……

 体育館に医師はいない。隣が市役所なので、立谷市長は「災害指揮をとりながら、自分が1階に下りて治療する」と保健師に準備をさせた。これも市民をパニックにさせないための手段だった。実際にケガをした市民が訪れて、5人ほどを治療する。「頭から血が出たとか、指をドアで挟んだとかいうような軽傷者でした」。

 ただし、間もなく市内の小児科医2人が交代してくれた。市長の放送を聞いて「自分も診なければ」と駆けつけてくれたのだ。「午前2時半には、病院での治療が一段落した息子も避難所へ巡回に来ました。午前8時には相馬市医師会長。続いて隣接する相馬郡の医師会長。何かあったら一致団結して対処してくれる医師の存在は相馬の財産です」と語る。

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防災無線での放送後、続々と避難して来た人を前に、屋外の駐車場で「落ち着いて」と呼び掛ける立谷秀清市長。首には風呂上がりのタオルが巻いたままになっている=相馬市役所提供。

 医療関係者のフットワークの軽さは、何度も大災害を経験しているからだろうか。

 相馬市は2011年3月11日の東日本大震災で被災した後も、2019年10月12日~13日の台風19号とその2週間後の集中豪雨で2人が死亡。2021年2月13日の福島県沖地震では震度6強を記録。今回も震度6強の地震に見舞われて、このところ毎年のように大きな災害が起きている。

 市職員の動きも早く、避難所設営は市長が指示する前から動いていた。

避難所をコロナ仕様に

 相馬市の避難所については、新型コロナウイルス感染症対策でかなり話題になった。

 避難所をコロナ仕様にしたのは昨年2月の福島県沖地震からだ。通常の施設は検温と手指の消毒ぐらいしか設備がないが、相馬市では職員の発案でテント600張を購入し、避難所内では家族ごとにテントの中で過ごせるようにした。これだと感染リスクが抑えられる。

 加えて、医師が待機する発熱者用の避難所も設営し、検温などで感染が疑われれば、すぐに抗原検査を行うようにした。「熱があったからといって、家に帰れと言うわけにはいきません。陽性者が避難できる方法を考えたのです」と立谷市長は言う。

相馬市中心街。「倒壊するかも知れません!!」と張り紙がある。

 その後、市内の救急2病院でPCR検査を行えるよう機材をそろえたので、今回の地震では抗原検査で陽性になれば、すぐにPCR検査ができる態勢を敷いた。

 さて、「次の死者」を出さないための対策だが、市民が落ち着きを取り戻した後は、人工透析など病院への手当てだと立谷市長は考えた。市内では停電に加えて大規模な断水も始まっていた。