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水と電気をどう確保するか?

「病院は電気を使います。例えば、今の点滴は自然滴下ではありません。重症者には心電図モニターも取り付けています。非常用電源があっても手術などにしか使えないし、持ってもせいぜい数時間です。一方、透析には多くの水と電気が必要で、非常用ではとても足りません。

 実は台風19号災害でも、相馬市内では大規模な断水が発生し、透析患者対策が課題になりました。この時の教訓から市が3トンの給水車を3台持っていたのですが、今回の地震では加えて停電もしてしまいました。そこで、政府のある高官に連絡を取り、朝までには東北電力の電源車に来てもらうことができました。これを二つの病院に配備し、透析などの病院機能はなんとか維持できました」

相馬市役所の玄関前には長いひび割れが走った。

 一方、市民への給水は市の給水車では足りず、応援が必要となった。

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 この時に機能したのは、立谷市長が会長を務める全国市長会で整えた市相互の支援体制だ。

「初動」のポイント

 まずは近隣市で助け合い、足りなければ県の市長会、さらに必要なら東北など地域ブロックの市長会、最後は全国市長会が調整して、市同士で直接支援を行う。

 2019年9月9日に千葉県を直撃した台風15号災害では、「千葉県君津市から水が足りないという情報が入り、全国市長会で調整しました。同県流山市長には私が電話連絡し、隣接する柏市長や松戸市長と一緒に支援に当たってもらったのです。短期的な支援なら、国などが調整するより早くて現場に合っています」と立谷市長は説明する。

 今回の地震では、発生直後の午前2時、立谷市長が木幡浩・福島市長に電話をして、給水車を担当職員ごと送ってもらった。それだけでは足りず、同市にはさらにもう1台を追加で派遣してもらったほか、同県伊達市、東京都稲城市、三重県名張市、滋賀県米原市、大阪府泉佐野市も全国市長会の調整で給水車を派遣してくれた。

相馬市内の停電は復旧したが、工事は続いていた。

 こうしてドタバタと発生からの数日を乗り切った相馬市だが、「初動」のポイントは何だったのだろう。

「地震で起きてしまったことは、もうどうすることもできません。しかし、市民には市役所がついている。市役所を頼ればなんとかなる。そう思ってもらえるかどうかで勝負がつくように思います。

 ロシア軍が侵攻したウクライナではゼレンスキー大統領がキエフに残り、発信することで国民の気持ちを支えています。同じことが災害にも言えるのではないでしょうか。皆で落ち着こう。やれることはやろうというメッセージこそ大切なのです。まだ発生直後ではありますが、今回も改めてそう感じました」

 立谷市長はそう力を込めた。

撮影=葉上太郎

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