1ページ目から読む
3/4ページ目

 そして、少々意外な存在が(3)だ。「兼業半グレ」とは、一体どういうことなのだろうか。

地下格闘技や仮想通貨…“兼業半グレ”の正体

「たとえば、腕力を競う地下格闘技団体に所属するなどウラ社会とのコネクションを築きやすい位置にいる者たちのことです。ほかにもビットコインなどの金融系取引に従事したり、風俗や飲食店などを経営する小集団もいます。彼らはそうした曲がりなりにも合法的な正業を通して(1)の半グレとも交わる可能性があるのです」

 そして(4)は、暴力団並みに危険性が高い「元暴アウトロー」だ 。近年、暴力団対策法や暴排条例の影響から、暴力団としての資金獲得活動が難しくなっている。暴力団離脱者は増加傾向にあるが、そのなかで本当の意味で“カタギ”になれるものは極々わずかだ。

ADVERTISEMENT

「離脱後少なくとも5年間は、暴排条例の規定で『暴力団員等』とみなされてしまいます。そうすると暴力団を離脱してもしばらくは様々な社会権が制約されるため、社会復帰がかなわないんです。社会復帰に挫折した行き 場のない彼らは、覚せい剤の売買や闇金、特殊詐欺に手を染め、元暴アウトローとなっていく。なかには(1)の半グレに吸収されて犯罪を重ねるものもいます」

※写真はイメージです ©iStock.com

 警察庁組織犯罪対策部「平成28年における組織犯罪の情勢」によると、平成23年から平成27年の間に暴力団を離脱した者のうち、その後2年間で検挙された者は2660人で、1年当たりの1000人当たりの検挙人員は144.6人にのぼる。

 これは、平成28年における暴力団構成員の1千人当たりの検挙人員(254.8人)より低いものの、同年における人口1千人当たりの検挙人員(2.3人)よりもはるかに高い水準だ。

“偽装離脱”した元暴アウトローたちの脅威

「彼らは、暴力団という非合法な社会に身を置き、非合法な文化の中で活動してきているわけですから、この数字も当然の結果でしょう。

 しかし、実はこのカテゴリーには暴力団を“偽装離脱”した元暴も含まれている。彼らは暴力団で蓄積した人脈や知識を持ちながら、暴力団よりもずっと自由な立場で動くことができます。元暴アウトローは犯罪のプロである暴力団に所属していたわけですから、かなり厄介な存在。真の社会的脅威といえます。

※写真はイメージです ©iStock.com

 警察庁暴力団対策課の報告書によると、暴力団がシノギとしなかった特殊詐欺であっても、暴力団員等(離脱後5年以内の者を含む)が主導的立場で関与している状況が見て取れます」

 令和2年における特殊詐欺の認知・検挙状況等をみると、犯罪の中枢を担ったとされる被疑者の45.0%、出し子・受け子などの指示役の46.0%、リクルーターの34.2%を、暴力団構成員等が占めている(警察庁暴力団対策課・生活安全企画課 令和2年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について【確定値版】)。

 こうした性質が異なるグループが、十把一絡げに「半グレ」とみなされているため、実態がより見えづらくなっているのだ。廣末氏は「青少年非行の延長線上にある半グレ集団と、職業的半グレとは、同一視できない」と続ける。