「特殊詐欺やみかじめ徴収、薬物販売に関係する者たちが半グレだというのであれば、正しくは(1)(3)のカテゴリーに属する者たちだけが半グレに該当するわけです。
カテゴリー(2)は、青少年非行の延長で犯罪に手を染めている者や“闇バイト”などへ巻き込まれた者という見方もできます。彼らは、見方を変えれば無知ゆえの被害者であり、社会的援助や支援サービスの提供によっては更生の可能性がある。
カテゴリー(4)の者は、警察では暴力団員等に分類されていますが、一方で半グレとの協働関係についてもより注視する必要があります。そして若い半グレとは別枠で把握し、対応していかなければならない。なぜなら、彼らは暴力団現役時代に犯罪スキルを磨き、犯罪的ネットワークを有するプロなのですから」
半グレと暴力団が溶け合うワケ「家庭に居場所がなくて…」
しかしながら、この(1)から(4)の類型は「メルトし変容を続けていて、時間の経過とともに明確な境界線を見出すことが困難になっている」という側面もある。
「そもそも半グレの少年も青年も、生育家庭に何らかの機能不全がみられ、家庭内に居場所がないことから街角家族的な非行集団に属し、非行を深化させていくんです。
その中でも、少年院や成人刑務所に収容経験がある者は、職業的犯罪者として10代の半グレを道具に利用して犯罪を行っている。さらに注意すべきは、職業的犯罪者である半グレは、地元の暴力団の犯罪を請負っていることです。つまり、犯罪の『元請け―孫請け』の構図が形成されている。
犯罪のネタ元である暴力団の存在は、元請けの半グレしか知らない。ここに、暴力団員とは異なる半グレの匿名性という本領が発揮されるわけです。“孫請け”の半グレからしてみれば、自分たちの行いが暴力団のシノギになっていることに気がつかない。知らぬ間に巨悪に取り込まれていってしまうのです」
この「負の回転ドア」を回し続けないために、できることはあるのだろうか。
「世の中が一度でも犯罪に手を染めた者への厳罰化へ傾き、社会的に排除する方向へ行きすぎていることで更生の可能性を奪っていることが問題なのです。私が就労支援をしてきた、特殊詐欺等に加担した(2)に分類されるような元半グレ青少年は、社会的援助や支援サービスの提供や、就労状況を見守るなどの丁寧なケアをすることで、少なくとも5名が更生し、就労に至っています。
犯罪に巻き込まれた人々の被害者感情は痛いほどわかります。ただ、半グレとしてひとくくりにせず、検挙された者であっても、更生の可能性がある者には、立ち直りの機会を用意する必要がある。それが、新たな被害者を生まないために一番必要なことなんです」
変容する「令和の半グレ」。私たちが知っているのは、その一部でしかないのだ。