「生きてロシアに帰れてもプーチンがお前らを生かせとくはずないぞ!」
5人全員の懺悔とも言うべき会見の後、質疑応答に入った時点でやはりウクライナ側の自信がのぞいた。司会者の金髪女性から最初に質問者に当てられた「イタリアのプレス」が英語で質問する。5人は自然に同時通訳のイヤフォンを手に取り、耳に押し込んだ。
CNNやBBCという欧米の大テレビ局は噂では今ウクライナ軍のエスコート付きでイルピンまで行ってるという話でこの場には姿を見せなかったが、仏、伊、ポルトガルなどのラテン系メディア多数と他のヨーロッパのメディアと日本人一人と、あとは地元ウクライナのメディアがいた。
質疑応答も終わり司会者の会見終了が告げられ、カメラマンもぞろぞろひきあげようとしていたとこに割って入ったのはスキンヘッドにOD色のTシャツ姿のじいさんだった。まだ座ったままの5人を見下ろし、ロシア語で声を荒げた。
「この人殺し野郎ども!」
「おれはだませんぞ! 生きてロシアに帰れてもプーチンがお前らを生かせとくはずないぞ!」
そのように聞こえた。アッ、このじいさん、同時通訳のブースで口角泡飛ばしていたやつやん。彼ら5人の発言を同時通訳させられていて、よっぽどムカついていたのであろう。5人のうちの真ん中の捕虜につかみかかりそうになったのを司会の女性にかろうじておしとどめられた。
キーウは今やメディアの“ジジ捨て山”と化しているようでもあった
のちにこの会見を国際人権団体が「ロシア兵捕虜を強要して出演させたのは戦時捕虜への待遇に関するジュネーブ条約違反だ」と非難した。この団体がどこの国のヒモ付きか知らんが、平和ボケしたやつはどこの国にもおるもんである。さっきも書いたが、ロシア兵捕虜は無理やり謝罪を要求されたり、薬を飲まされ誘導されてるようにはとても見えなかった。「強要して出演させた」というよりは自発的に「プーチンが悪い」と語っていた。それにそもそも非難すべきは隣国を一方的に侵略し、非戦闘員も殺戮するという、ジュネーブ条約にはなんと書いてるかしらんが、明らかな人道に対する犯罪を犯しているロシアのほうやろ。
その後、会場を去った5人。ワシも落ち着いて記者席のほうを振り返ってみて、唖然となった。室内にもかかわらず、記者団は皆防弾チョッキしょってるのは、自主的なのか、ポーズなのか分からんが、みなもうよぼよぼのお年寄りばかり、カメラも小型でせいぜい1台。若いのがこの不肖・宮嶋で機材もカメラ2台が一番おおげさに見えるくらいである。
しかもみーんな小汚くひげボーボー……なのはワシぐらいか。しかし5人の捕虜のほうがよっぽどこぎれいに見えたのは間違いなかった。キーウは今やいつ死んでも惜しくないようなヨーロッパのメディアの“ジジ捨て山”と化しているようでもあった。って、ワシもか。
ワシは死に場所を与えられたか……。
会見が終わり、ふとひとりわが身を振り返る不肖・宮嶋であった。
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