不肖・宮嶋、最後の戦場取材へ――。
数々のスクープ写真で知られる報道カメラマンの宮嶋茂樹さん(60)。これまでにイラク、北朝鮮、アフガニスタン、コソボなど海外取材を数多く経験し、あまたのスクープ写真を世に問うてきた。そんな不肖・宮嶋がロシアの軍事侵攻に揺れるウクライナへ。混乱する現地で見えてきた「戦争の真実」とは?
西部の都市リビウから医療物資を運ぶフォード社製の大型車両に同乗させてもらい、不肖・宮嶋は首都キーウ(キエフ)に到着した―ー。
(シリーズの10回目/前回を読む)
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我が頭上に爆弾が降らんことを祈りながらすでに20時間、戦時下を走り続け、ほうほうの体で首都キーウにたどり着いたのである。ここからがカメラマンの仕事なのである。
AK-47小銃構え完全武装、傭兵ルックの一団にいきなり囲まれた
すでに到着したばかりのホテルのロビーにはこれ見よがしに防弾チョッキを背負い、鉄パチ(戦闘用ヘルメット)を抱えた同業者がたむろしていた。それに加えて迷彩服や黒いつなぎの戦闘服にカタログでしか見たことない最新式の武器と大量の弾薬でコテコテに身を固めた軍人、民兵、武装警察隊で溢れかえっている。
まずはわずかやが荷をほどき、眠りたい。まずはまずは無事キーウに着いたことを喜びたい。しかしそれは試練の始まりやったのである。毎度毎度の。
フロントには誰もいなかったが、呼び鈴を押すとジーンズ姿の女性が出てきた。エレーナと名乗り「部屋はイナフある」と言う。シングルは2500フリヴナちょい(約1万円)、朝食付きである。部屋は6階の裏通り側、電気、水道、お湯が出た。ワイファイとやらも無料であった。早速道中世話になったグーグルマップを開く。
おっ、大統領府はすぐそこやんけ。部屋が裏通り側やから気が付かんかったけど、こりゃあ、考えたあないけど、ここにロシア軍戦車が現れたときが世界の終わりの時や。まあバグダッドのパレスティナホテルみたいやないか。
イゴールらが無事リビウにたどり着いたと知らせが届いたその日、1階に何ともなしに降りると、傭兵ルックの一団にいきなり囲まれた。もちろん全員最新式のAK-47小銃構え完全武装である。
「なんやろ? ホテルゲスト(宿泊客)やけど?」
あごをしゃくられたさきでは、昼間からロビーがざわついていた。というか同業者で溢れかえっているのである。皆室内というのに防弾チョッキしょったまま。まあいつどこで会っても同業者は匂いでわかる。
エレベーターホールというにはたった3基しか動いてない乗り場前に机がおかれ、「REGISTRATION(受付)」「メディアセンター」と札が下がり、そばに若いにいちゃん女性が控えていた。
「今日はなにか?」
「あなたもプレスのかた? カンファレンス(会見)が、2時から、ここの2階の会議室で。あっ、ちょっと遅れるかしら」
そして申し込み用紙らしきものと注意事項が書かれたようなコピー書類を手渡された。
「あなたアクレディテーションはもうお持ち? あっ無ければ、出席できないのでリモートのライブでご覧になって」