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「そもそも、緊張しいなんです。インタビューはいつも事前に質問案をいただいて、答えをびっちり書いていくんですよ。国語力が足りないから、予想外の質問が来るとパッと答えられない。あとから、あれも言いたかったこれも言いたかったと反省することが多くて。

 でも、今回はやめたんです。準備していない答えの中にひっかかるものが、もしかしたらあるかもしれないと」

 確かに、吉田サイドから質問案の事前提出を求められることはなかった。と同時に、共にラジオ番組に出演した際、リスナーからの相談にしっかりと事前回答を用意してきた吉田の姿も思い出された。当意即妙な受け答えをする印象があったので、驚いた記憶がある。

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本名の吉田羊はすさまじく自信がない女

「主人公が求めるタイミングで、ちょうどよい言葉を渡す先輩のような役を演じることが多いんです。そのせいか、普段からしゃべれる人だろう、しっかりしている人だろう、かっこいい人だろうと思われることが多くて」

 芝居では活き活きとアドリブを演じるのが吉田羊。演技ならば対応できるのが興味深い。

©Keiko Nasu

「役は、私自身ではないから。役を軸に考えれば、そのキャラクターのやりそうなことは何となく想像がつく。でも私自身は、いまだに自分が何者かも分かっていない。分からないものに対してはコメントができない。自己肯定感が低いんです」

 俄かには信じられないが、威風堂々とした俳優・吉田羊の「中の人」である本名の彼女は、すさまじく自信がない女だ。手ごたえのある仕事を成しても、それが完全に払拭されることはないという。

「この状態が永遠に続くものではないと、ドラマ『HERO』(2014)で全国的に認知していただいたときから思っています」

 堅実さの表れかと尋ねると、吉田はこう答えた。

「それもあるけれど、私自身が何もしてこなかった人なんですよ。小さい頃から頑張ってこなかった。いろいろごまかしてきたし、責任逃れしてきたし、サボってきたし、とにかく向き合ってこなかったんです、自分の人生と周りの人に」

 頑張らない、ごまかし、責任逃れ、サボり。およそ似つかわしくないフレーズばかりが吉田の口をついて出る。世間が捉える吉田羊像と、本人が語る吉田羊が、少しずつ乖離していく。