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整備をするかしないかを判断する基準は…

 中古車の納車前整備や車検などにおいて、整備をするorしないの判断には、大きく分けて2つの基準が存在する。

「保安基準」と「社内規定」だ。

 まず「保安基準」とは、道路運送車両法の中に記載されている基準のことで、車の構造や装置が実際の運行に十分耐えられ安全であるための基準。ナンバーが付き、公道を走る車は必ずこの保安基準をクリアーしていなければ、公道を走ることが許されず車検不合格となる。

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 しかし、この保安基準、国が定めている基準であっても、絶対の安全を保障するものではない。極端な言い方をすれば、たとえブレーキパッドが1mmなかったとしても、左右バランスよく基準値以上の制動力があり、スムーズに解除できれば車検をクリアーできてしまう。

 なぜなら、保安基準にはブレーキパッドの厚みに関して、具体的な残量(厚み)の規定はないからだ。

 そこで、多くの中古車販売店や整備工場では、保安基準+αの社内規定を設けて安心・安全を目指した整備が行われている。業者によって基準を自由に決められるため一定ではないが、社内規定にはブレーキパッドの厚みやタイヤの残溝などに対し、交換基準が具体的な数値で決められているのだ。

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点検した整備士の裁量に任される整備内容

 ではなぜ、それらの基準に照らし合わせて整備を行っているのに、納車後に真っすぐ走らない、ガタガタ音がするといった、明らかな不具合が残ってしまうのか?

 そこには、中古車の納車前整備特有の事情があると言わざるを得ない。納車前にどこまで整備を行うかを決めるのは、先に挙げた保安基準や社内規定に加え、「時間」と「お金」が大きく関係してくる。

 販売店側の立場で言えば、整備に手間を掛ければ掛けるほど人件費がかかるため、納車前の手間(時間)はできるだけ掛けたくないのが正直なところ。

 そして、納車前に改めて点検した結果、新たな不具合や基準外の項目を発見した場合には整備をしなければいけないが、そうすると部品代というコストが掛かる。納車前整備費用を上乗せしてユーザーに請求するか、販売利益を圧縮して吸収しなければならず、キャンセルのリスクや粗利の確保などを鑑みると追加の整備をしたくないという構造だ。

 そこで、保安基準や社内規定に適合しない項目は必ず整備しなければならないが、明確な基準の無い項目は、点検した整備士の裁量に任される。ここに納車前整備を不確実なものにしかねない大きな要因が潜んでいるのだ。